
業務用建物・店舗の電化として、本紙ではビルエレベーター・エスカレーター、空調や照明という建物一体型の機器、あるいは厨房のような店舗と一体の調理機器や冷凍冷蔵庫および回転寿司などを中心に紹介した。一方で、オフィスや小売店、飲食店には建物とは別に、そのビジネスを支える機器の分野があり、例えば飲料・食品の自動販売機、飲料サーバー、カラオケ用の機器、タオル(おしぼり)ウォーマー、空気清浄機などがそれである。ここではそれらの経緯や昭和期の物語をみていこう。
◇飲料、麺類、スナック…自動販売機に多様なスタイル◇
過去の「にっぽん電化史」でも取り上げた自動販売機は、省力化・無人化に熱心で犯罪が少ない日本で特に発達し、大量に普及した機器で、中心となる飲料から幅広い食品に広がっている。まず昭和の情景として、10選の冷凍冷蔵機でも登場した星崎電機(現ホシザキ)が昭和37年(1962年)に作った噴水型ジュース自販機「街のオアシス」、同じく昭和37年、コカ・コーラの日本進出とともに登場し、全国に設置されたという引き抜くタイプのビン自販機「ベンダー V-63」は一部の世代には強烈な記憶として残る製品だ。飲料メーカー大手としては、コカ・コーラ、サントリー、アサヒ飲料、キリン、ダイドー、ポッカサッポロといったところがあるが、その商品を販売する機器については最大手の富士電機をはじめ、パナソニック、サンデンといった提携するメーカーが存在する。このうち富士電機は昭和45年の大阪万博でカップ式自販機を230台設置して自販機時代の先陣を切り、この後のビンから缶への容器シフトもあいまって各飲料メーカーが自販機による市場拡大に力を入れることになった。

昭和46年に日清食品によって登場したカップヌードルの自販機も、今日まで日本中のオフィスや大学などに普及する息の長い商品であり、「どこでも食べられる」というマーケティング革新は色々な場で語られる。製造を担った三和ベンドサービスは、この後、カップヌードル自販機から他の麺類、サンドイッチやお菓子のマルチ自販機、調理機能のある他の食品自販機まで幅広い食品を手掛けるようになった。筆者は昭和時代、三和の自販機で熱々のハンバーガーを食べたことを懐かしく思い出した。
自販機の項目の最後に、その技術革新について述べたい。世界初の冷温兼用飲料自販機は今では当たり前の技術だが、昭和48年にポッカコーポレーションによって登場した時はかなり画期的なものであった。物流などを支えるトラックドライバーらは冬場でも冷たいコーヒーしか飲めなかったが、ポッカは缶コーヒーの容量自体を大型化(120cc→190cc)するとともに、夏には冷たいコーヒーに切り替えられる兼用機種を三共電器(現サンデン)と共同開発した。日本の自販機は平成期に入った後、ほぼすべてがピーク電力の発生回避が可能なエコベンダーになるなどの様々イノベーションを重ねているが、このポッカの挑戦はその後の自販機イノベーションを先導するものだったかもしれない。
◇オフィスと飲食店 癒しの時間を豊かに彩る

自販機と並んでオフィスで働く人々に飲み物を提供するものとして、コーヒーサーバーをはじめとするカップ式サーバーがある。こちらはホシザキのような冷蔵技術系、象印のような温熱系、オフィスレンタル機器出身のユニマットといったメーカーが活躍している。
一般の食堂はもちろん、スナックやラウンジでよくみられるおしぼりウォーマー(タオルフォーマー)も、現在は中国をはじめとする海外製が多いが、もともとは日本メーカーのタイジが昭和39年に「ホットキャビ」という商品名で売り出したものである。おしぼり文化は日本独自のものだが、近年では中国の高級店で普及している。
さらに、昭和期にはスナックやラウンジといった飲食店で普及していたカラオケは、その後の昭和後期から平成にかけてカラオケボックスに発展、今日に至っているが、もともとは昭和51年、第一興商が8トラックテープ用のカラオケ機器「プレイサウンド」を販売したあたりからスタートした。8トラックとはもともとオープンリール時代にテープを聴くのが難しかった自動車用の音楽テープとして使われていたカセットテープで、昭和のカラオケの標準でもあった(「8トラ」という言葉を知っているのは確実に昭和世代である)。
その後、昭和の最後のあたりにレーザーディスク(LD)カラオケが登場し、さらに8トラ・通常のカセットテープ・CD・LDを変換できるオートチェンジャーも普及。平成に入ると通信カラオケへとの発展を遂げる。カラオケはやや下火になった感もあるが、実は介護施設や高齢者施設で大いに普及しているなど、より広い範囲で人々に楽しみを与える電化遺産となったといえる。
◆業務用部門の電化・WEB版の10選◆
▼「噴水型ジュース自販機『街のオアシス』」昭和37年/星崎電機(現ホシザキ)
▼「ビン自動販売機『ベンダー V-63・半自動』『ベンダー V144・全自動』」昭和37年/東京コカ・コーラ
▼「カップ式飲料自販機(大阪万博)」昭和45年/富士電機
▼「カップヌードル自販機」昭和46年/日清食品(※製造:三和ベンドサービス)
▼「オフィス用コーヒーサーバー」昭和52年/ユナイテッドスティール(現ユニマットコーポレーション)
▼「ホット/コールド兼用自販機」昭和48年/ポッカコーポレーション(現ポッカサッポロフード&ベバレッジ、製造:三共電器・現サンデン)
▼「ホットキャビ(タオルフォーマー)」昭和39年/タイジ
▼「カラオケ機器『プレイサウンド TD-201』」/昭和51年/第一興商
▼「LDカラオケ機器『LD-V15』」昭和60年/パイオニア






