JERAは業務の生産性向上を図る「Kaizen」の活動で、着実に成果を上げている。火力発電所の現場で直営技術力に磨きを掛けながら、タービン点検の作業工程を効率化。発電所構内に自前のメンテナンス拠点を設け、作業に応じた専用の治具や工具を所員自ら作って現場に展開する事例も見られる。鹿島火力発電所(茨城県神栖市)では、大重量の蒸気タービンを1人で吊り込む手法を確立した。他の発電所への展開も進めている。


「鹿島工房」では現場で必要な治具などを発電所員が自前で作っている


 同社は「鹿島工房」と呼ばれるメンテナンス拠点を鹿島火力構内に設置。工作機械を配備し、治具の製作や材料の加工などを所員自らが行っている。現場の状況や作業内容に合った道具を自前で作ることでコスト削減や時間短縮を図れる。外注する場合と比べ、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの加速化にもつながっている。

 鹿島火力は現在稼働しているコンバインドサイクル発電設備の7号系列で、蒸気タービンの点検効率化に取り組む。全長約8メートル、重さ約20トンにもおよぶタービンを相手に、所員が自らの手で分解や組み立て作業に挑戦。タービンの構造や材料の特性など細部にわたる知識・技術を蓄積している。これをベースに協力会社と連携を図りながら検討を進め、タービン吊り込みの1人作業化を実現した。これにより、従来の手法と比べ65%の効率化を達成している。

 鹿島火力でKaizenの成果を上げる背景には、廃止した設備の存在も大きい。現地では廃止した1~6号機の撤去工事が進む中、3号機の実機をKaizenに活用。実機を用いた訓練を繰り返すことで、直営技術力に磨きを掛けた。他の発電所の所員も鹿島火力を訪れ、鹿島工房や3号機を活用しているという。

 鹿島火力の高安英明所長は、Kaizenの活動について「自分たちで手を動かしながら進めることで、設備の構造や材料について詳しく学べる」と意義を語る。今後はKaizenの深掘りを図り、さらなる工数の削減を目指していく考え。高安所長は所員の積極的な挑戦を促せるよう、「全力でサポートしていく」と話している。

電気新聞2024年11月26日