欧米で大型化が進む洋上風力
欧米で大型化が進む洋上風力

 欧米の風力発電機メーカー大手が相次いで1基1万キロワット超の着床式洋上風車を開発している。スペインのシーメンス・ガメサは、出力1万キロワットの風車を2019年に試作し、22年にも市場投入する予定。米ゼネラル・エレクトリック(GE)も子会社のGEリニューアブルエナジーが1万2千キロワットの洋上風車の試作機をオランダに建設する。日本では1万キロワット級の大型風車の導入例はないものの、洋上風力計画は実証から事業化の段階に移っている。低コスト化につながる大型風車の導入は時間の問題といえそうだ。

 現在、商用化されている洋上風車の出力は、三菱重工業とベスタス(デンマーク)が折半出資するMHIベスタス・オフショア・ウインドの9500キロワットが最大級。この風車は欧州北部の北海で進められる合計出力100万キロワット弱の大型ウインドファームで採用される見通しだ。

 風車の大型化は、発電効率の向上、1キロワット時当たりの低コスト化につながるため、近年の受注競争を勝ち抜く大テーマとなる。北海では総出力140万キロワットの計画も存在し、事業者も大手メーカーの開発動向を注視する。

 シーメンス・ガメサは従来機種から年間発電効率30%増を目指して、出力1万キロワットの新型「SG10.0―193DD」の開発に着手。ローター径が193メートルに達する機種で、あらゆる風速で最大のエネルギーを獲得するシステムを採用。大型化に伴う安全性も確保している。

 GEリニューアブルエナジーも大型化を進める。同社はオランダの再生可能エネルギーコンサルタント会社のポンデラなどと、出力1万2千キロワットタイプの試作機を設置する契約を締結。21年の商用化を目標に運転データを収集する。

 このほかMHIベスタスも出力1万キロワットの風車を21年から納入する方針を示している。

 大型風車が導入される欧州に対して、日本では小規模ながらも洋上風力の事業化が見えてきた。12月には富山県で民間出資では初となる洋上風力計画が始動。三井E&Sなどの案件で、21年1月に出力計8千キロワット(2千キロワット×4基)の風車が発電開始する見通しだ。

 このほかにも、計画中だが20万キロワット級の案件も東北地域で浮上している。

 国内においては政府も洋上風力の普及を後押しする。11月には一般海域で洋上風力を建設するためのルールなどを定めた新たな法案が成立。風車を港湾内に導入する際、港湾管理者が行う審査を円滑化するための基準の策定も進めている。

電気新聞2019年2月13日