アンモニア専焼試験を行った相生事業所の試験設備


◆JERA・碧南の実証成功、5割超達成へ布石

 IHIは、石炭だきボイラー燃料のアンモニア転換推進に自信を深めている。4月から6月にかけてJERAとともに碧南火力発電所4号機(100万キロワット)で実施した実証試験では、20%分の石炭をアンモニアに転換することに成功。20%転換の技術が確立したとの確証を得た。転換率50%以上の大型実証試験や将来的な専焼の達成に向けても手応えを得た形だ。

 碧南4号機の実証試験は、アンモニアと石炭の燃焼特性の違いによる設備への影響や窒素酸化物(NOx)の発生を十分抑制できるという見通しを得た上で実施した。設備変更はバーナー交換とアンモニア供給設備の新設にとどめた。

 実証試験の結果についてIHIの高野伸一理事・資源・エネルギー・環境事業領域カーボンソリューションSBU長は「一言で言えば大成功だ。20%転換は商用化のステージに入った」と話す。

 IHIとJERAは50%以上の燃料転換についても、2028年度までの大型試験実施を目指している。IHIはアンモニア専焼に関する自社研究も行っている。試験設備ではNOx発生量を抑制した状態での専焼に成功しており、燃焼技術のさらなる高度化を進めている。

 ただ、既存ボイラーの転換率を高めるためには、火炎の燃焼特性の違いがボイラーに及ぼす影響を見極める必要がある。特に高温の燃焼ガスの熱を水に伝える伝熱面は、その材質や面積を変更するなど大がかりな改造が必要になることも想定される。IHIは既存ボイラーの燃料転換はやみくもに進めるものではなく、経済合理性を見極めての判断になるとの見方だ。

 一方、ボイラー燃料のアンモニア転換は化学産業など蒸気のニーズが高い分野の脱炭素化を進める上でも重要だ。高野氏も同社がボイラー燃料の転換率向上に取り組む背景として「発電用だけでなく熱供給を想定しているところがある」と解説する。同社は液体アンモニア専焼ガスタービンの商用化に向けた取り組みも進める。ガスタービンとボイラーの両輪で脱炭素化を進める方針だ。

電気新聞2024年10月11日