SF6ガス不使用の8万4千Vドライエア絶縁開閉装置(イメージ)

◆関西送配電に納入/保守作業性も高まる

 三菱電機は六フッ化硫黄(SF6)を使用しないガス絶縁開閉装置(GIS)の開発に注力している。環境に配慮し、ドライエア(乾燥空気)を絶縁媒体に採用。絶縁性能を補うため装置が大型化する点が課題だったが、構成機器や操作部の配置を工夫することで省スペース化を進める。関西電力送配電への納入が決まった8万4千VGISを手始めに対応電圧を拡大。2035年段階で、世界のGIS販売のうち50%以上を脱SF6製品にする目標を掲げる。


柳井 部長

 ドライエアを採用した8万4千VGISの初号機は、関西電力送配電岩田変電所(京都府八幡市)への納入が決まった。三菱電機系統変電システム製作所の柳井健人・開閉機器製造部長は「変電所のリプレースや新設需要に環境性能の高い製品で応えていく」と話す。

 開閉機器の絶縁体として主流のSF6は高い絶縁性能を有する一方、地球温暖化係数(GWP)が二酸化炭素(CO2)の約2万4千倍と極めて高い。日本政府はパリ協定で、SF6を含む温室効果ガスを2030年に13年比26%削減する目標を設定。欧州や米国ではSF6ガスの使用禁止に向けた環境規制整備が進む。こうした潮流を受け、同社は19年からドライエアを絶縁体に利用するGISの開発を始めた。

 ドライエアは自然由来の窒素と酸素からなり、地球温暖化係数はゼロ。従来のGISに比べて、製品のライフサイクル全体で温室効果ガスを73%削減できる。一方、同気圧下における絶縁性能はSF6に比べて3分の1程度にとどまる。

 GISに充填されるドライエアは圧力を上げることで絶縁性能を高めるが、それだけではSF6の水準に届かない。電圧が上がれば上がるほどGIS自体のサイズが大きくなる上、ドライエアで満足な絶縁性能を得るために、圧力容器本体がSF6製品に比べてより大きくなってしまう課題があった。

 そこで、小型化のため、真空遮断機を縦置きにして、主母線を重ねて配置することで幅を抑え、据え付け面積の省スペース化を実現した。この方法だと高さは増すが、据え付け面積は1960~70年代の最初期(第1世代)のGISと比較して3割ほど省スペース化が可能。経年化した設備の更新などに活用することで、変電所のコンパクト化に貢献する。

 保守作業性も向上させた。従来品は構成機器の間に操作部が配置され、設置面積の拡大や保守作業を柔軟に行うことが困難だった。三菱電機は操作部の配置を変更。人が通りやすい通路面に配置することで、小型化と保守作業性の両立を図った。

 柳井部長は今後の開発方針について、「より高い電圧に対応できる製品を顧客は求めると想定している」と指摘。「本体サイズの小型化と高電圧化を並行して研究している」と語る。

電気新聞2024年10月7日