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図2 電力市場の全体像
図2 電力市場の全体像

 少し掘り下げて考えてみたい。

 まず現在、旧一電のみならず新電力においても、再エネを中心にコーポレートPPA(C―PPA)の取り組みが進められている。C―PPAとは、多義的であるが、ここでは新設を念頭に太陽光など特定の発電所で発電した電気/環境価値を紐づけて需要家へ供給し、当該発電所の投資回収が可能となる期間(15~20年間)においてその対価を支払うことを内容とする契約と定義する。当該発電所は、特定の需要家のニーズで建設されたことが明確であり、『小売電気事業者による電源アクセスの公平性が求められるものではない』として、内外無差別の例外として整理されている。

 今後は蓄電池などを組み合わせることで24時間・365日すべてのコマで脱炭素電源による電力供給を行う「24/7CFE」(carbon free energy)の取り組みが進むことが期待される。更には、「24/7CFE」を将来的に実現する取り組みとして、LNGの将来的な脱炭素化へのコミットを前提として、変動性再エネと新設LNG電源を組み合わせたC―PPAを組成することができれば、LNGの長期契約の確保にもつながる。

 こうした取り組みは、市場競争を通じて供給力等の確保が図られることに繋がるため、極めて意義深いものであるが、日本全体の供給力等の確保という観点からは十分ではない。AIの普及などでデータセンター増設が加速しており、これまでにない電力需要の増加が見込まれる中、日本全体として、必要な供給力を判断し、必要量を確保する仕組みが不可欠である。

 この点は、本論壇の第1回(編注:2024年5月20日付掲載)で戸田直樹氏が言及していた「Competition for the market(市場に参加するための競争)」の問題であり、図2で示しているように、供給力等を確保するための市場の在り方の問題といえる。

 まず具体的な施策を検討する前提として重要となるのは、必要量の判断、すなわち国全体として需要と供給力等の見通しを立てることである。現在、電力広域的運営推進機関において将来の電力需給シナリオに関する検討が進められているが、将来的には、そのシナリオを基に電源種や調整機能等に応じた「電源版マスタープラン」を策定し、それに向けて具体的に必要な制度的手当てを検討・実施することが理想的な姿といえる。