閲覧ベスト20から2018年を読み解く

 

災害が多発。北海道ブラックアウトが最大の関心事に

 
 電気新聞デジタルの2018年閲覧ランキングトップは、やはり、北海道全域停電の記事。9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響で、北海道電力の苫東厚真発電所1、2、4号機が停止。送電線も停止したことから、北海道全域が停電し、ブラックスタートを実施することになった。紙面では関連記事のほか、長期連載「考察・北海道ブラックアウト」もランクインしている。同連載の第1部では電力広域的運営推進機関による第三者検証委員会の議論を中心にレポート。第2部では専門家や有識者へのインタビューを掲載した。2019年も第3部を掲載していく予定だ。

 今年は北海道胆振東部地震だけでなく、大阪府北部地震、西日本豪雨、台風21号など、天災に相次いで見舞われ、そのたびに電力設備も被害を受けた。

 

電力自由化の進展と競争の激化。経営問題や大型提携の動きも

 
 次に注目を集めたのは、電力自由化に伴い、競争が激化する電力小売りビジネスに関する記事だ。第2位の「Fパワー、最終赤字120億円に」では、新電力トップの経営状況の変調に注目した。第4位「電気料金未納、踏み倒し対策が急務」は、スイッチングを繰り返して電気料金を踏み倒す確信犯の存在を報道。また、第5位の「変化を追う 第3部」は、他業界も入り乱れ加速する小売り競争の現状を追った連載企画だ。第6位の「大手電力の余剰電源、エリア内で卸販売拡大」の記事も、大手電力が、小売りを行う新電力への卸販売を始めたという内容。さらに第9位の「Jパワー・KDDI、エナリスにTOB」も、小売り競争の中で進む大型提携の動きの一つだ。12月20日にTOBは成立した。
 

FITで普及した太陽光。懸念されていた系統への影響も現実化

 
 また今年は、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)により急速に普及した太陽光発電が、安定供給への脅威となっている状況が明らかになった年でもあった。第8位の「太陽光発電比率、四国・九州エリアで需要の8割超す」は、今年のゴールデンウイークの段階の話だが、13位、第14位の記事の通り、九州電力では10月、本州で初めて出力制御を実施するに至った。FITについては、国民負担が拡大。一方、第5次エネルギー基本計画に再生可能エネルギーの主力電源化がうたわれた。これらを背景に2020年度末のFIT法の抜本見直しに向け議論が始まっている(第10位「迫るFIT法“抜本見直し”」)。2019年のFIT切れ太陽光発電設備への対応を伝えるのは「FIT切れ太陽光、蓄電池活用で料金低減」(第17位)。

 このほかにも、需給バランス悪化に関連する記事が目立つ。第20位「東電エリアで2週連続の融通」は、2018年1月、厳寒で東京電力エリアで需給が逼迫し、電源I’(イチダッシュ)の発動や融通が相次いだことを報じた。また第16位「スポット取引25日渡し、100円超す高値記録」は、夏の猛暑による市場価格の高騰を伝えている。第18位「経済DR、国内初の発動」は、日没時間帯の残余需要の急増、いわゆるダックカーブに、DR(デマンドレスポンス)で対応する取り組みについての記事。電力自由化やFITなどの制度設計における課題が読み取れる。
 

デジタル技術は課題解決となるのか? その挑戦が始まった

 
 こうした課題解決に向けて注目されるのがデジタル技術。仮想発電所(VPP)への取り組みを連載した第11位「VPP事業に挑む・各企業の戦略」をはじめ、第15位の「AIで充放電、夜間料金割引に」など、技術革新を事業に取り入れる動きも注目を集めた。

 電力システム改革の最終段階となる発送電分離が実施される2020年4月まであと1年余り。2019年は新たな体制への準備に向け、動きがさらに活発化しそうだ。

電気新聞2018年12月28日