コールドプレスで製造したブロック材
コールドプレスで製造したブロック材

 高レベル放射性廃棄物を地層処分する際の「人工バリア」の一つとなる緩衝材、ベントナイトの製造法が、火星基地の建設に応用されるかもしれない。大林組と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12日、基地の建設に使うブロック型の材料を製造する方法を開発したと発表。両者が行った実験では水分を含むベントナイトを砂と混ぜ、常温で高い圧力をかける「コールドプレス」という技術を用いて製造した。両者は今後、建設材料の大型化、品質の安定化など実用化に向けて改良を進める。

 大林組は1990年頃に月や火星の探査に必要な基地建設の材料を現地の資源を利用して製造する方法を研究し、マイクロ波やコールドプレスによるブロック体製造の可能性を確認していた。製造法を確立するには、材料強度が得られるか確かめる必要があったことから、JAXAの「宇宙探査イノベーションハブ」事業の研究テーマとして提案。共同研究に至った。

 火星にはベントナイトが存在し、水も氷の形で得られると推定される。大気の密度が地球の約100分の1の火星表面では、ブロックの強度は地球上で製造するより1割程度増加することが判明している。

 火星表面の重力は地球上の約3分の1であることから「居住施設などの構造材料や放射線遮蔽材などとして使用する場合は普通れんが(赤れんが)相当の強度で十分」(大林組)という。両者は電子顕微鏡での表面観察や圧縮試験によりブロック材の強度を調べ、基地建設に適用可能であることを確認した。

 人工バリアの緩衝材はブロック型とは決まっていないが、ベントナイトを主成分としている。ベントナイトは水を通しにくく、物質を吸着する性質を持つため、放射性物質の移動を遅らせる役割がある。

 両者は他にも、月での建設材料製造に関する実験を実施。月では水の調達が難しいため、マイクロ波加熱による製造が適すると判断している。

電気新聞2018年9月18日