先月ドイツで開催された見本市「ハノーバーメッセ」で高出力充電設備を見学するメルケル首相(左端)
先月ドイツで開催された見本市「ハノーバーメッセ」で高出力充電設備を見学するメルケル首相(左端)

 ABBは世界最速で充電できる出力350キロワットの電気自動車(EV)用充電器を発売した。「テラHP」と名付けたこの新製品は、EVが200キロメートルを走行するための電力をわずか8分で充電可能。蓄電池が大容量化しても、短時間で充電を完了できる。同社は先月23~27日にドイツで開催された産業見本市「ハノーバーメッセ」で新製品を展示。既に世界各国で受注を開始しており、10月末以降に順次納品を開始する予定だ。

 現在日本で販売される一般的な急速充電器は出力50キロワット程度。30分で容量の約80%を充電できるといわれている。しかし、EVメーカーは航続距離を伸ばすため蓄電池の大容量化を進めており、今後は充電時間が長引くことが予想される。

 「テラHP」は従来の約7倍の速度で充電を行う。関連機器を収納する2つのキャビネットと充電ポストを備え、複数のEVを高出力で同時に充電することもできる。設備を追加設置することで、将来的なEVの普及拡大にも対応可能だ。

 ハノーバーメッセではドイツのメルケル首相やメキシコのニエト大統領もABBのブースを訪れ、同社のシュピースホーファー最高経営責任者(CEO)とともに高出力充電の実証結果などについて説明を受けた。

 「テラHP」は、米国の17都市や高速道路沿線に数百カ所の充電ステーションを整備する「エレクトリファイ・アメリカ」のプロジェクトにも採用が決まっている。

 ABBは新製品を高速道路の休憩施設やガソリンスタンドなど向けに売り込みたい考えだ。国ごとの規格に対応する必要があっても、原則として世界同時発売としている。日本からも注文を受けられるという。

 ABBは2010年からEV用充電設備の提供を開始。乗用車向けのクラウド接続型直流高速充電器は世界で6500台以上を販売している。

電気新聞2018年5月23日