経産相に西村氏、自民政調会長に萩生田氏

 
 岸田文雄首相の電撃的な内閣改造で、経済産業相が交代となった。エネルギー政策で課題が山積する中、西村康稔経産相のリーダーシップが注目を浴びる。くしくも政府の政策に影響力を持つ自民党の政務調査会長には、萩生田光一前経産相が起用された。萩生田氏は経産相就任以来、原子力発電所の新増設・リプレースの必要性を周辺に示してきた。政府・与党の新体制の下、原子力を含むエネルギー政策が前に進むかどうか、大きな転換点に入った。

 西村経産相は、1985年に旧通商産業省に入省。99年に退官して政界入りするまで、一部エネルギー政策にも関わった。安倍、菅内閣では経済再生担当相を務め、エネルギー政策にも関連する政府の成長戦略策定を主導。そのため、経産省内からエネルギー分野には一定の「土地勘」があるとの見方が出る。ただ、電力政策の知識が乏しく、それを懸念材料とする声も。山積する課題にどう対処するのか、電力業界が注視する。現時点でその手腕は未知数だ。

 一方で萩生田氏は、党の立場から政府のエネルギー政策に強い影響を与え得る存在となった。経産相時代の記者会見では安全運転に努め、踏み込んだ言及はしなかったが、経産省関係者によると、原子力新増設・リプレースの必要性は、昨年の経産相就任時から強く認識していた。

 萩生田氏は経産相を務めた約10カ月で積極的に海外を訪問し、多くのエネルギー相と会談。日本の置かれる厳しいエネルギー事情を肌で感じた。電力需給逼迫や、LNG確保を中心としたロシア問題にも直面。高市早苗前政調会長も原子力を推進したが、エネルギー政策への理解度では分がある。

 萩生田氏は10日、経産相としての最後の会見で、原子力の扱いの検討をやり残したと強調。党の立場からエネルギー政策に関わる意思を鮮明にした。

 早速注目されるのは、政府が8月中に開く予定の第2回GX実行会議。原子力について“政治の決断が求められる項目”が具体的に何なのか。エネルギー業界が下す新体制への評価は、この文言次第で大きく変わりそうだ。

電気新聞2022年8月15日