米国原子力エネルギー協会(NEI)のマリア・コーズニック会長は、NEI会員事業者へのヒアリング調査の結果、2050年までに米国で9千万キロワットの原子炉新設が検討されていると述べた。米国の原子力発電設備容量は現在約9900万キロワットで、新設の検討規模はこれに匹敵する。気候変動対応やエネルギー安全保障の観点からの世界的な原子力再評価の動きを受け、米国内では「原子力業界がかつてないほどの活況を呈している」との認識を示した。

 12日、東京都内で電気新聞のインタビューに応じた。この中でコーズニック会長は、今後の新増設に向けて(1)効率的な規制手続き(2)サプライチェーン(供給網)の整備(3)労働力の確保――の3点が課題となると指摘。米国での新設は当面、小型モジュール炉(SMR)や高速炉などの革新炉が中心となることを踏まえて「2、3年以内にパイロットプラントの建設を開始し、金融部門に原子力がカーボンフリー実現に向けた効果的な投資先になることを示す必要がある」との考えを示した。NEIとして、米原子力規制委員会(NRC)に、非軽水炉型の革新炉に対する効率的な審査実施に向けて、準備を進めるよう要請していると説明した。

 また、今後は水素製造や蒸気供給など発電以外の原子力活用も増加していくと指摘。「米国全体、特に電力部門以外の輸送、製造部門の脱炭素化には(9千万キロワットの新増設でも)足りない」と説明した。

電気新聞2022年7月13日