実証で用いられたホンダの電池交換式二輪「ベンリーe:」

 電池交換式二輪車の普及に向けた機運が盛り上がっている。日本自動車工業会などは4日、2020年10月~22年4月に行った実証実験「e(ええ)やんOSAKA」の分析結果を報告。大阪大学の学生などに車両を貸し出し、街中でバッテリー交換を体験してもらったところ、肯定的な反応が得られ、インフラ密度の重要性などが確認された。成果はENEOSを中心に設立された新会社Gachaco(ガチャコ、東京都港区、渡辺一成CEO)が引き継ぎ、今秋に東京と大阪で事業を開始する計画だ。

 「eやんOSAKA」では学生、教職員130人に電動二輪車を貸し出すとともに、バッテリー交換ステーションを学内やローソン店舗に設置。走行データを取得し、参加者から感想などを聞き取った。

 4日に大阪府吹田市で開かれた会見で自工会二輪車特別委員会の日高祥博委員長(ヤマハ発動機社長)は、「参加者のうち約55%は二輪経験がなかった」と説明。バッテリーサービスを組み合わせることで新規需要の創出が期待されるとした。走行実績が毎月100~300キロメートル程度でガソリン車と同等だったこと、69%が車両を「買いたい」と回答したことも紹介した。

 ゲストとして登壇したGachacoの渡辺CEOは、経済産業省の補助事業として今秋に東京、大阪でサービスを始めることや、23年度に千台規模とする方針を説明。「利用距離に応じた月額料金の設定で事業性は成り立つ」と強調した。

 国内大手二輪4社は「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を昨年構成し、規格の統一などで共同歩調を取る。日高委員長は電動二輪車普及のネックとなる「電欠の不安」について、「バッテリー交換インフラの充実度に相関し、解消できると『eやん』で確認できた」と指摘。大手4社から対応車種が投入され、選択肢が広がれば普及が加速すると見通した。

電気新聞2022年7月5日