IHIは、小型モジュール炉(SMR)用機器の製造を2024年にも始める。提携する米ニュースケール・パワーからSMRの設計図面を受け取っており、1月からモックアップ(模型)の製作などの下準備を始めた。29年を予定するニュースケール社製SMRの商用初号機の稼働に向け、機器製造時や据え付け時の課題を洗い出している。建設コストなども検証した上で、24年にも実機を製造し、25年頃の現地工事を想定している。
IHIは昨年、米エンジニアリング企業でSMRを開発するニュースケール社に出資した。IHIが供給する具体的な機器はまだ協議中だが、図面を参考に機器製造のコスト、据え付けに要する期間なども調べている。部品調達先との交渉も始めており、納期や調達できる部材量なども調整している。
機器製造の下準備として、原子炉建屋外壁のモックアップを製作し始めた。この中で現地工事のコストなどを試算しており、結果をニュースケール社に報告している。
実機製造に向けて、溶接に関する検証も始めた。IHIは国内の加圧水型軽水炉(PWR)、沸騰水型軽水炉(BWR)向けに格納容器などの主要機器を納めている。溶接の知見は豊富にあるものの、ニュースケール社製SMRはこれまでの機器と金属材料が異なる。溶接による材料の変形度合いを調べ、実工事に生かす。
理事・資源・エネルギー・環境領域原子力SBU長の緒方浩之氏は、23年中にも具体的な機器の発注が来ると想定した上で「29年の稼働までを見通して、現段階からコスト削減策を考える。初期の導入コストを抑えられれば、採用が増える可能性がある」と話す。
ニュースケール社のSMRは、米アイダホ州の原子力発電所向けが商用初号機になる見通し。1基当たりの出力は7万7千キロワットで、同発電所には10基程度納める計画。ルーマニアでも導入に向けた協議を進めている。ニュースケール社にはIHIのほか、日揮ホールディングス(HD)も出資している。
電気新聞2022年2月24日
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