球状太陽電池を糸状に結線して織り込んだスフェラーパワーの「発電テキスタイル」
球状太陽電池を糸状に結線して織り込んだスフェラーパワーの「発電テキスタイル」

 球状太陽電池の発電性能評価や試験方法について、国内標準(JIS)化に向けた検討が開始される見通しとなった。日本産業標準調査会(JISC)が「新市場創造型標準化制度」の活用案件として、昨年12月に球状太陽電池の製造・販売を手掛けるスフェラーパワー(京都市、井本聡一郎社長)の提案を採択した。今後、関係機関で標準化の原案作成が進められる予定。

 同制度は、主に国内中小企業の規格開発を支援する狙いから、2014年7月に創設された。優れた技術・製品で市場の創設・拡大が見込まれていても、既存の規格では評価しづらく、業界団体での合意形成も難しい案件に対し、迅速な規格原案の作成を後押しする。

 今回はスフェラーパワーの「球状太陽電池を用いた発電テキスタイルおよびセルメッシュ・ガラスモジュールの標準化」などが採択された。

 同社は繊維産業が盛んな福井県内の事業者とともに、直径1~2ミリメートル程度の球状太陽電池セルに導電糸をつなげた発電糸を織り込んだ発電テキスタイル(布地)を開発。折りたたんだり、丸めたりして容易に持ち運ぶことができ、現在は災害時の電力供給などに役立つ可搬式テントに活用されている。板ガラスに埋め込む製品も展開している。

 ただ、平板の太陽電池とは異なり、球状の電池には発電性能を評価する規格がないのが実情。試験方法も規格化されておらず、今回の標準化検討を通じて市場環境を整えることで、製品の普及拡大につなげたい考えだ。

 同社では「既存の太陽光設備では自然災害の影響を受けたり、光害が問題になったりしている。球状太陽電池の標準化が進めば、都市型のメガソーラー案件などの実現にも寄与できるのでは」としている。

 採択に向けては、JISC標準第二部会で同制度の活用の可否を審議。昨年12月に標準化の検討を進めることでまとまった。今後、日本規格協会が同社を交えた原案作成委員会を設け、実際に原案作成を進める予定。作成後にJISCで審議され、国内標準になる。案件ごとにばらつきはあるものの、通常JIS化までには1~2年程度かかるという。

電気新聞2020年2月6日