◆現場への敬意、イラストに込めて
 ◇イラストレーター くまみね氏

 人差し指を立てた独特のポーズで「ヨシ!」と発声する猫のイラストを一度は目にしたことがあるだろう。このイラスト「仕事猫」の作者がくまみね氏。ゆるいながらも特徴を捉えた筆致で見るに楽しく、時にはあえて仕事猫がひどい目に遭う姿を描くことで危険な行為が何かを伝えている。九州電力送配電とコラボレーションしたLINEスタンプも第2弾まで発売中だ。くまみね氏は体を張って働く現場の人たちに尊敬の念を持ち、けが防止の注意喚起になればと考えている。(聞き手=林史子)

 ――くまみね氏の作品「電話猫」をコラージュした「現場猫」がインターネット上で流行していました。「仕事猫」が生まれたきっかけは。

 「『電話猫』の作者が作るものは『仕事猫』としています。以前から『現場猫』をグッズ化してほしいと要望を頂いていましたが、同じ名前にすると盛り上がりに水を差してしまうと考え、最終的に仕事猫という名前にしました。また、現場猫には中央労働災害防止協会のキャラクター『ヨシだ君』などがコラージュされていたので、グッズ化に際して中災防に許可を頂きに行きました。それをきっかけに中災防からポスター作成の依頼を受けたのが印象的です。以降、官公庁から依頼を受けるようになりました」

 ――仕事猫のイラストを描くとき何に気を配っていますか。

 「働いている人から見て大きな矛盾がないよう、構図やポーズ、仕草を考えています。大きく矛盾があると自分たちに向けて作られたものではない、業務内容を把握せずに描いていると思われてしまうからです。また、堅い業種では指差しを右手にしなければいけない、などということもあります」

 ――機械や道具などの描写に詳しさを感じます。

 「元は整備士をしていました。また、工具マニアでもありました。仕事で他の人が良い工具を持っていたらメーカーを尋ねて、買って使い比べていました。自分で見つけた工具を皆に教えて『これはいいぞ』となった時はうれしかったです」

 ――九州電力送配電とコラボしてLINEスタンプを発売しています。

 「山奥に送電に携わる人しか通らないような道があるなど、大変な仕事だと理解しています。地中送電の動画も見ました。あれだけ太いケーブルを取り回すのは力がいる仕事だ、重いだろうなと思いました」
 「ダムなど大規模設備が好きです。大きい物を作る人間の文明の力も、それを壊れないように維持管理していることもすごいと感じます」

 ――仕事猫は危険なことをして、トラブルに見舞われるキャラクターですよね。

 「かわいらしすぎる猫だと、トラブルやひどい目にあっている姿を描けないキャラクターになることもあります。でも、仕事猫はひどい目に遭ってもらうことで、どうして危険なのか分かりやすく知ってもらえるキャラクターです。(危険なことを)やらかす猫と『同じ目に遭いたくない』と思ってもらえたら、目的を達成していると思います」

 ――ポスターに仕事猫がいると目を引きます。

 「面白くしなければ見てもらえず、見てもらえないポスターや掲示物には意味がありません。面白くなるように考えています。また、掲示物の中には、文章を読まないと分からない物が結構あります。自分も文字ばかり書いてあると読みたくなくなるので、ぱっと見てどうなるか分かるようにしないと見ないというのは体感しています。このため、文章が読めない人にも分かるようにと意識しています。きれい事ではなく、何をしてはいけないか、なぜダメなのかをできる範囲で具体的に示しています」

 ――指差し確認は重要です。

 「鍵のかけ忘れに気づくなど、指差喚呼することで分かることがあります。指差し確認することが恥ずかしいことではない、注意するために必要なことだと思ってもらえたら良いなと思います」

九州送配電とコラボした第2弾のLINEスタンプ|イラストレーターくまみね氏
九州送配電とコラボした第2弾のLINEスタンプ

 ――国土交通省とのコラボなど、活躍の幅が広がってきています。

 「ありがたいことにお話を頂いています。『仕事猫が出ているから見る』という人がいるとするなら、少しでも興味を持ってもらえたら、助けになれたらという気持ちです」

 ――現場で働く人に伝えたいことは。

 「毎日、電気やガス、水道を不便なく使えているのはインフラを守っている人たちのおかげです。そのおかげで私もキャラクターが描けています。いつもありがとうございます」
 「体を張って仕事をしている人が一番強いと思っており、尊敬しています。それがイラストに反映されていると思います。そういう人たちが楽しく働けるよう、けがをしないでほしいです。(仕事猫が)注意喚起の一環になればと思います」



イラストレーター・くまみね氏
イラストレーター・くまみね氏

◆メモ
 仕事猫、電話猫、ムジーナなど数々の人気キャラクターを世に送り出してきた。国交省のほかに農林水産省、警視庁、日本自動車工業会など多数の業界団体と連携してきた実績がある。