エネルギー基本計画や電力広域的運営推進機関(OCCTO)が策定する需給シナリオにおいて、蓄電池が極めて重要視されている。蓄電池事業については、FIT制度初期の太陽光発電事業と同様、設計、選定から施工、運用・保守、終了時に至るライフサイクル全体の規範が十分に示されないまま投資が加速しており、安全性や事業継続性の観点から懸念がある。「蓄電池事業に関するガイドライン」は、このような背景から既存の国際規格に追加し、蓄電池事業に必要な安全面や長期運用上の規律および推奨する安全要求を定めたものである。


 蓄電池ガイドラインの要点を整理すると、以下のとおりだ。

 (1)蓄電池システムが設置・運用される場所は日本国内である。従って、海外メーカー製品において、国際規格や生産国の法令・規則を満たしていたとしても、日本の法令・基準に適合する必要がある。

 (2)定置用蓄電池は電池単セルで構成されるものではなく、コンテナ型であれば数千セルが集積され、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、パワーコンディショナー(PCS)その他の装置と組み合わせシステムが構成・運用される。従って、単セルが国際規格の「認証を取得している」だけでは、安全・安定的な長期運用は保証できない。

 製品規格であるJIS C8715―2/IEC62619に加え、システム全体としての安全を定義するJIS C4441/IEC62933―5―2への適合が重要である。特に1つのセルで発生した熱暴走が隣接セルに伝播する「類焼」を試験する耐類焼性試験の実施、テストレポート(写真や温度プロファイル、発生するガス種と量など)から設計マージンを読み取る事が安全性を検証する上で重要な項目である。

 ◇メーカーの監査も

 (3)蓄電池システムを選定する際には、選定メーカーの事故の有無と導入実績、システムの安全性機能の調査、更に実際のセル生産工程の監査を行うなど、リスクアセスメントを行うことが重要だ。PCSに関しても、安全性と性能の両立が不可欠。性能面では電力変換効率、安全面では各種安全上の保護機能や感電対策の為の防水IP保護等級の確認が必要である。

 (4)一部の海外メーカーでは、仕様書やマニュアルが実運用に不十分で、簡略な内容のものが見受けられる。新製品の導入は極めて速く、中長期的に交換用予備品の補充が困難になるリスクがある。必要な予備品の準備不足で不具合時の復旧に支障が生じることも懸念される。事業者は、これらを念頭にメーカー等と協議の上、運用・保守を適法かつ合理的なコストの範囲内で安定的かつ継続的に実施できるよう、各種仕様書やマニュアルなどに基づいた整備、予備品の確保や保守体制の整備を行うことが重要だ。トラブル発生後に場当たり的な対応を行うことは事業機会の損失につながるだけでなく、装置に不可逆的なダメージを与える事もある。

 運用に当たり、各種データの定期的な取得、分析は極めて重要である。劣化やトラブルの兆候を早期に把握することにより、信頼性の高い長期運用・保守の実現が期待できる。

 ◇施工の不具合回避

 (5)蓄電池システムの選定や設置工事に当たっては、安全に運用できるよう地盤強度を確認の上設置することが必要だ。また、トラブルとして、主回路ケーブルと制御ケーブルの設置配慮ミスによる漏れノイズで運用が停止する事例も多く見られる。トラブル発生時に容易に対応できる構成や設計の必要がある。いったん不具合を内在した設備が完成してしまうと、運用方法の工夫のみで対応できる範囲は限定的であり、設備改修に要するコストは一般に大きくなる。

 (6)事故発生時には、電池が有する燃焼特性や発生するガス類への対応方法およびその種類について、消防に対し適切に伝達できなければ重大な二次災害を招く恐れがある。また、事業終了時の廃棄に当たり、電池や冷却液の成分を把握していなければ、適正な廃棄物処理が困難となる可能性がある。廃棄物処理法や資源有効利用促進法を理解し、導入段階でメーカーからSDS(安全データシート)や廃棄物処理法に基づく情報を入手しておく必要がある。

電気新聞2026年7月27日