蓄電池は、電源予備率の低下と再生可能エネルギー大量導入が同時並行する日本の電力システムにとって、なくてはならない存在になった。一方で、電力システムの歩みの中にあって蓄電池は、各種発電機のほか送変電や配電に関わる機器・システムに比べて技術と経験の蓄積による鍛錬がまだまだ足りない未熟な機器・システムであり、日本の現状はまだ一種の玉石混交といえる。今回の連載では、日本の定置型蓄電池を踏まえながら、先ごろ発足した「定置用蓄電池適正化・安全推進連絡会」がとりまとめた、蓄電池事業に不可欠なガイドラインを紹介していきたい。

 蓄電池は電力システムの歴史の中では新参者である。無論、電池の源流であるボルタの電池の発明は1790年代と古いものの、電力用の大型蓄電池が登場したのは今世紀に入ってから。日本で系統用蓄電池が数多く接続されるようになったのは、2020年代以降である。

 一方で、発電機や送変電・配電システムは19世紀末にテスラが三相交流システムに挑戦して以降、100年以上の時間をかけて発電機の製造・運転に関わる技術の向上、送変電機器と配電システムの遮断・保護を含む信頼度向上などを、メーカーと電気事業者が一体となって鍛錬を重ねてきた。現在の発電機や送配電機器の品質は、これらの経験蓄積と悪い製品のそぎ落としの成果である。例えば「50/60ヘルツできちんと回らない発電機」や「過負荷で燃えてしまう送変電機器」というものは現在地球上には存在しない。

 ところが蓄電池の場合、残念ながら「このレベルなら電力システムの中で確実に使え、事故や不十分な稼働が起こらない」というレベルの確保もいまだ手探りで進められているのだ。


 ◇危機に果たす役割

 一方で、日本の電力システムにとって蓄電池の果たす役割は大きい。25年の第7次エネルギー基本計画にも「再エネを吸収し、夕方ピークに供給する」という例を挙げてその推進を明記している=図参照。

 電気事業に携わる人の一部には、蓄電池や再エネを敵視する傾向がないとはいえない。しかし、電力システム改革の失敗によって十分な電源予備力を持たず、ホルムズ海峡危機のような輸入燃料価格のリスクに常にさらされる日本の電力システムにとって、これら2つを組み合わせた電力システム能力の維持・向上がなければ、向こう10~20年安定してエネルギー危機に強い電力を届けることは現実としてできないことなのだ。

 ◇事業者の選別必要

 その上で、現状の日本の蓄電池を取り巻く問題点も2点挙げたい。1つ目は、プレーヤーと蓄電池自体のきちんとしたスクリーニングができないまま蓄電池事業が活況になってしまったことだ。12年に太陽光など再エネを対象としたFIT(固定価格買取制度)が開始した時、十分な施工力や事業規律のないまま制度がスタートし、後に水害時などに大きな問題となったのに似ている。蓄電池の場合、最大のリスクは燃焼と他者に対する被害であり、太陽光よりも悪影響が大きい。

 2つ目は、蓄電池が厳選され稼働が信用できれば、本来強い味方となるはずの一般送配電事業者と蓄電池が、あたかも敵同士のような不幸な位置取りになっている点である。需給調整市場発足当初の過大な募集量、旧一般電気事業者への入札上限価格規制による火力・水力の参入障壁、逆に蓄電池の甘い上限価格規制等の相乗効果によって、諸外国にはない一種の「蓄電池バブル」が起こった。その結果、接続申し込みが殺到し、送配電業務の大きな障害となっているのだ。

 英国やカリフォルニアでは、電力システムを補強するために送配電事業者と蓄電池事業者の相対による計画的な蓄電池導入が行われている。対して日本では送配電事業者の自由度が小さいという欠点も影響している。

 制度的問題はともあれ、現状一番の問題は、日本に存在する蓄電池が発電機や送配電機器に比べてきちんとした品質、特に最も重視すべき安全について、事業者が守るべきルールがはっきりしていないことだ。

 これに対応するため、代表的な蓄電池メーカー、蓄電事業者、アグリゲーター、EPC(設計・調達・建設)事業者、そのほか有識者が約2年かけ日本で守られるべきガイドラインを作成し、今春「定置用蓄電池適正化・安全推進連絡会」(代表理事=西村陽・大阪大学招聘教授)を立ち上げ、公開した。

 次回以降ではこのガイドラインを順に紹介していきたい。

電気新聞2026年7月13日