
九州電力は、一般水力の諸塚発電所(宮崎県諸塚村、5万キロワット)を揚水化し、水のくみ上げ時にもポンプ水車の回転速度を調整できる「可変速揚水発電システム」を導入する計画を進めている。数万キロワット級の揚水では国内で初めて、周波数変換器を介して回転数を調整する「1次可変速方式」を検討。従来型と比べ構成機器が少なく、トラブルのリスクを抑えられるなどのメリットがある。2026年度に準備工事に入り、33年度の運転開始を目指している。
可変速揚水は「2次励磁可変速方式」が一般的。2次励磁変換器で発電電動機の回転子に流れる電気の周波数を調整し、ポンプ水車の回転速度をコントロールする。
この方式の場合、他にもいくつかの装置が必要になる。その1つは、水のくみ上げ時にポンプ水車を起動するサイリスタ始動装置だ。ただし、同装置は経済性の観点から大容量化は難しく、水中でポンプ水車を始動する出力を得られない。このため、ポンプ水車周辺の水を押し下げて回転しやすくする措置を設置する。さらに、発電電動機の発電・揚水を切り替える相反転開閉器も要る。
1次可変速方式は、周波数変換器を通して発電電動機の固定子に流れる電気の周波数を調整し、ポンプ水車の回転速度をコントロールする仕組みだ。
周波数変換器によってポンプ水車の水中始動や、発電電動機の発電・揚水切り替えができるため、始動装置、水面押し下げ装置、相反転開閉器が全て不要になる。発電電動機の回転子は一般水力や定速揚水と同様の形式で対応でき、特殊な設計を必要としないなどの利点もある。
1次可変速方式はこれまで数百キロワット級の揚水で採用事例はあるが、変換器の大容量化が課題だった。半導体の技術革新によって数万キロワット級への対応が可能になったという。
諸塚発電所は1961年、揚水発電所として運開。08年に老朽化に伴い揚水設備を撤去し一般水力として運用していた。24年度に実施された長期脱炭素電源オークションで落札し、老朽化した主要機器の一括更新に合わせて揚水化する。上下ダムや建屋は既設を流用し、建設コストを抑制する。環境影響評価(環境アセス)が不要で開発期間も短くて済む。更新後の出力は約5.2万キロワットに増加する。
九州エリアでは25年の昼間の揚水回数が1389回と、14年に比べ10倍近くに増加している。太陽光発電の系統連系量が増大する中、余剰電力を吸収する役割が増している。揚水運転時の消費電力を調整できる可変速システムは需給バランスを確保する上で、大きな意義がある。
電気新聞2026年2月9日





