産業界でこれまで行われてきたM&A(企業の合併・買収)については、属人的な営業手法や長期化する成約プロセスといった構造的課題を抱えてきた。こうした状況を打破すべく、M&A業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速している。M&A総合研究所は創業より、AI(人工知能)とデータ活用を軸とした独自のDX戦略を推進してきた。複雑なM&A仲介業務の効率化とマッチング精度の向上を両立することで、譲渡企業完全成功報酬型の料金体系を実現してきた。本稿では、当社の具体的な取り組みについて解説する。

M&A業界では以前、M&Aの提案から成約まで、多くの時間と労力を要していた。また、不確実な料金体系や情報流通の不透明性、アドバイザーの属人性が課題とされていた。
当社は、こうしたM&A業界における構造的な非効率性を抜本的に見直すべく、2018年の創業当初から、テクノロジーを中核に据えたDX戦略を推進してきた。
最大の特長は、外部委託に頼らず、自社内にエンジニアチームがいる点が挙げられる。既存のパッケージなどに頼らずフルスクラッチで独自システムを開発しており、現場のM&Aアドバイザーやバックオフィスが、日常業務で直面する課題に合わせてシステムを即座に改修できる開発体制を構築している。
また、AIとデータを活用した独自のマッチングエンジンを開発し、企業間の相性を数値的に可視化している。AIマッチングエンジンを活用したデータドリブンなアプローチにより、過去の経験だけでは想定されにくかった異業種間のマッチングなど、新たな可能性を提案できるようになった。
◇完全成功報酬型に
当社では、DXによる業務効率化を徹底することで、譲渡企業に対しては完全成功報酬制を実現している。
譲渡企業からは着手金や中間金を一切受け取らず、M&A成約時にのみ費用が発生する料金体系だ(譲受企業には基本合意締結時に手数料が発生)。この料金体系は顧客にとって大きな安心材料となっており、親族内承継や社内承継といったほかの選択肢と並行して検討できる点がメリットに挙げられる。
また、案件情報を一元管理して社内共有することで、属人性を排除し、サービスの品質を均一化している。この透明性の高い運用体制が、顧客との強固な信頼関係を築く基盤となっている。
◇営業の知見可視化
当社は、DXを組織運営にも応用している。M&Aアドバイザーの成果や営業ノウハウを数値で可視化・社内共有し、チーム制を導入することで、新人社員でも短期間で実践的なスキルを習得できる環境を整えている。
また、蓄積されたビッグデータを分析し、過去のM&A事例から成功・失敗パターンを学ぶことで、営業戦略や交渉の精度を飛躍的に向上させている。一般的に成約まで1年~1年半ほどかかるといわれているが、業界水準を大きく下回る平均約7.1カ月(25年9月第3四半期実績)という成約期間を実現している。
当社は創業以来、テクノロジーを基軸としたDX戦略で業務全般にわたって抜本的な変革を起こしてきた。今後も、あらゆる経営者にとってM&Aをより身近な選択肢として、安心して検討できる仲介サービスを展開していきたい。同時に、「M&A×DX」によって、さまざまな社会的課題の解決と日本経済の活性化に貢献していくことが、当社のミッションであると考えている。
電気新聞2025年9月29日





