この連載も2021年、22年に続き、ついに3回目となる。最初の連載時は、内外の名立たる完成車メーカーが、30~40年頃にはクルマを全て電動化すると表明した頃だ。筆者自身も電気自動車(EV)を購入し、その実態レポートなどをお届けした2回目は、世界的にEVが売れ始め、EVシフトという言葉まで生まれた。3回目の今回は、世界的にEVの販売数の伸びが減少に転じ、各国完成車メーカーもICE販売終了計画を見直すと発表している。このような状況を踏まえ、改めてEVにまつわる話題をユーザー目線も混ぜてご紹介しようと思う。

 前回連載の2回目でユーザーの実感として「現在のEVは、ガソリン車など既存ICEと同じように振る舞うよう作られており、正直言ってさほどエキサイティングな存在ではない」と書いた。EVは、道路交通法令の許、ICE運転免許と同じ運転技能で扱えることが宿命づけられている。

 ICEは百年以上かけて成熟してきた商品であり、ガソリンスタンドなどの地上系インフラを含め、極めて完成度の高い商品だ。これと戦わなければならないEVは、主にバッテリー容量に起因する航続距離、ガソリンなら1~2分で済んでしまう給油に相当する充電に30分~数時間を要する、出先の充電インフラがどこにあるのかよく判らず、また使用方法にも不安があるなど、まだまだ解決すべき課題があり、当初からディスアドバンテージを背負わされている少々気の毒な商品に思える。

 ◇気候変動への対応

 では、なぜ各国の完成車メーカーは全面EV化を経営目標に掲げたのだろう。そこには、やはり世界的な気候変動と脱炭素という人類共通課題があり、二酸化炭素(CO2)排出量でいえば、発電セクターについで、運輸、すなわち自動車を主とする輸送機器がCO2の大きな排出源となってしまっている実態があるからだろう。

LCA的な分析では、EVはICEに較べCO2排出量が必ずしも少ないわけではない、という研究結果もあるようだ。しかし、エンジンで化石燃料を燃やし、排気管からCO2を含む排気ガスを排出するICEはやはり環境に対しては悪役に見えてしまう。こんなこともあって、我先にと先の目標設定に走ってしまったのではないか、と思う。逆に言えば、短期的に多少売れ行きが悪くなろうとも、今後も世界の完成車メーカーはクルマの電動車化を粛々と進めるだろう。ここでいう電動車とは、バッテリーで動くEVに加え、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車(HV)、HVを充電可能な仕組みにしたPHEV、そして水素と大気中の酸素を電気に変える燃料電池を搭載するFCVの四種類を指す。

 ◇「踊り場」乗り越え

 実はEV売れ行きペースダウンと似たような現象を我々は過去にも目撃している。しかも、やはり環境に関係する商品である。それは、再エネ、特に太陽光発電装置である。導入量の変化が顕著だった13年前後のドイツの様子をグラフに示す=図。このころ、ドイツでは発電電力の買い取り価格の大幅な値下げなどがあり、ドイツの太陽光発電の導入量は急減した。しかし、現在のドイツの再生可能エネルギーの普及状態はどうだろうか。地勢的な理由もあり、欧州では太陽光発電より風力発電の方が優勢であるが、23年の電力消費量約5170億キロワット時に占める再エネの割合は、前年比で5ポイント増の50%強と報じられている。欧州は国によって電源構成が異なり、さらにこれらが相互に接続されているので単純な議論はできないのだが、ドイツ単体だけに注目すれば、13年前後の動揺を乗り越え、着々と再エネ導入が進んできたということになる。

グラフ_独_太陽光発電導入実績_web

 改めて、EVについてみてみると、同国のEV政策は、柱だった補助金制度を23年12月に予定より1年前倒しで終了するなどの影響もあって、24年は同国のEV販売数は大幅に減少した。環境に関係する商品は販売当初価格が高い場合も多く、売れ行きは補助金などの政策に左右されることが多い。同国では既に回復基調の情報もあり、環境問題を進めるなら、このような問題に一喜一憂することなく着実に駒を進めることが必要だろう。

◆用語解説

 ◆ICE Internal Combustion Engineの略で、ガソリンエンジンなど内燃機関を言う。これらによって走行するクルマの総称としても使われる。
 ◆LCA Life Cycle Assessmentの略。製品やサービスを作る原材料が採掘などされ、販売・利用を経て廃棄されるまでのライフサイクル全体における環境負荷を評価する手法をいう。
 ◆再エネ 再生可能エネルギーのことで、太陽光発電やバイオマス発電などを指す。これらのうち出力制御が困難な太陽光・風力発電を自然変動電源と呼ぶこともある。
電気新聞2025年4月28日