第71回「電気のある生活」写真賞 入賞作品が決定

 第71回「電気のある生活」写真賞(全日本写真材料商組合連合会協賛)の入賞作品が決定しました。

第71回「電気のある生活」写真賞・最優秀賞「ラストラン」

「ラストラン」大西 隆(大阪府)

 今回は全国の734人から2264点の応募がありました。最優秀賞には大西隆氏(大阪府・85歳)の「ラストラン」が選ばれました。また特選には千葉洋氏(高知県・59歳)の「チームワーク」、準特選には工藤喜晃さん(大阪府・37歳)の「通天閣に灯る大阪の夜」と、山中健次さん(和歌山県・72歳)の「地蔵盆」が、それぞれ選ばれました。
 また今回から小学生・中学生・高校生を対象とした特別賞も設けられ、66人・115点の応募の中から金賞に坂本梓さん(徳島県)の「能登の先端」、銀賞に藤中凪さん(愛知県)の「虹の階段」、田中歩さん(東京都)の「その先に」が選ばれました。
このほか一般部門で入選20点・奨励賞20点、特別賞部門で銅賞10点が選ばれました。

第71回「電気のある生活」写真賞・審査風景
審査を行う榎並悦子氏(中央、写真家)、藤本淳一氏(右、電気事業連合会専務理事)

 今回の応募者は、年代別では70歳代の応募が35%と最も多く、次いで80歳代が19%で、退職後の趣味に写真を楽しんでいる世代が全体の半数以上を占めました。
 「電気のある生活」写真賞は1955(昭和30)年から始まり、国内でも有数の歴史がある写真コンテストです。当初は「電気人懸賞写真」として創設され、第27回から名称を現在のものに変更しました。過去には日本大学芸術学部写真学科を創設した金丸重嶺氏、日本を代表する写真家の一人である木村伊兵衛氏も審査員を務めています。
 選考は2025年1月24日に行われ、榎並悦子(写真家)、藤本淳一(電気事業連合会専務理事)の両氏が審査を行いました。

>>入賞作品一覧はこちらからご覧いただけます。


【最優秀賞・喜びの声】“ドクター”引退、安全守り続けて 大西隆さん

 この度は私のこの一枚を選んでいただき、ありがとうございます。審査員の榎並先生、藤本先生、関係者皆様にお礼申し上げます。
 最優秀賞の連絡を受け、大変驚きました。ありがとうございます。
 私の写歴は古く、約60年になります。2019年頃からこちらのコンテストに応募させていただいておりますが、こんなにも早く賞をいただけるとは思いませんでした。
 私の撮影したこのドクターイエローは、新幹線のお医者さんとして活躍していましたが、2025年1月に引退することになりました。運行ダイヤが非公開であるため、目撃すると幸せになるとも言われていました。
 新幹線が安全に速く走り続けることができるのは、ドクターイエローのおかげではないでしょうか。
 私も写歴を延ばせるように、健康に気をつけ、残りの人生を楽しみながら走り続けたいと思います。


【講評】内容濃く、時代捉えて/榎並 悦子氏(写真家)

 とてもうれしいことに今回は応募者数がかなり増えた。それに比例してか、内容の濃い作品が目立った。昨年元日に能登半島地震が起き、「記録として残さなければならない」との思いを強くした方も多かった様子で、作品に見入った。
 加えて、凝った作品が増えた印象だ。例えばスローシャッターで光跡をうまく出したり、プロジェクションマッピングを画づくりに生かしたりするなど、普段から写真をよく撮っているたくさんの方が応募して下さったのだと思う。
 これまで最優秀賞に選ばれた写真を振り返ると、その時々の時代を捉えている。今回の「ラストラン」もそうだ。「見ると幸せになる」といわれて人気を呼んだドクターイエローが引退を迎え、惜しむ気持ちを込めたのではないだろうか。背景がなんともすてきで、日本の大動脈である新幹線の線路を見守ってきたドクターイエローに、東寺の五重塔を組み合わせている。
 電気の様々な「顔」が捉えられている点も、今年の特徴だ。準特選のうち「通天閣に灯る大阪の夜」は、まるでネオンの海のようで、電気が街に活気をもたらしていることが伝わる。一方、「地蔵盆」は真っ暗闇に浮かぶちょうちんの明りにホッとさせられる。
 また、今年は小中高校生対象の特別賞が新設され、多くの方に関心を持っていただけてうれしい。金賞の「能登の先端」は、震災後に撮った風景。灯台の明かりが海上交通を守り続けていることに思いを寄せていて、感動した。来年以降も電気とのつながりを意識しながら、すてきな作品を見せていただけるとうれしい。

【講評】若い世代の感性映す/藤本 淳一氏(電気事業連合会専務理事)

 日常のふとした瞬間を捉え、自分の心情と重ね合わせたような作品が大変印象に残った。今年から小中高校生対象の特別賞が設けられ、若い世代の感性を映し出したような写真が多く寄せられたことが、とてもうれしかった。
 例えば銀賞の「虹の階段」は、エスカレーターに描かれた虹に気がついて撮った作品。われわれ大人が普段見過ごしてしまいような光景を、違った感性で表現して頂いた。
 もう一つの銀賞の「その先に」は、ふと気付くと、日常生活を支える電力設備があって、その先には設備を支える人たちがいる。そんなことを印象づけてくれていると感じた。意図的かどうかは別として、配電線と通信ケーブル、送電線が1枚の写真に収められていて、うまい組み合わせだと思った。
 最優秀賞に選ばれた「ラストラン」をみてあらためて思ったのは、電気も電車もインフラの一部で、安全・安心・安定が重要という共通点がある。それを見守ってきたドクターイエローが引退し、次に引き継がれていくことに時代の変化が読み取れた。
 とても印象的だったのは特選の「チームワーク」。この1枚を撮って下さったことに感謝したいと思う。今冬は日本海側を中心に降雪量が多く、大変な日々を過ごされている方も少なくない。「電気で生活を支える」という使命感を持ち、豪雪の中で作業に当たってくれている仲間の存在は非常に心強く、応援の気持ちを届けたい。
 電気と生活は切っても切り離せない。様々な写真を通して、その接点をあらためて見つめ直す機会になったと感じている。