◆全国13高専・15チームが参加
バルーンやドローンで空を舞う。ゆっくりと階段をはいあがる。学生たちが知恵を絞ったロボットが様々な表情をみせた「第1回廃炉創造ロボコン」が今月3日、日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センター(福島県楢葉町)で開催され、全国から13高専・15チームが参加した。東京電力福島第一原子力発電所を模した階段や、凸凹の床を遠隔操作で攻略。想像以上の“悪条件”にトラブルも続出したが、技術者の卵たちが廃炉という難題に向き合い、柔軟な発想で乗り越えようという熱意が会場内にあふれていた。(写真=山口 翔平)
◇全国の若き頭脳を集結
全国の高専が一堂に会した開会式。北は北海道、南は熊本から計15チームが参加。日頃培ってきた技術・技能を存分に発揮した。初開催のため、選手はもちろん、審査員や運営側にも緊張感と期待感が満ちていた
◇廃炉という難題に挑む
競技フィールドで「ドローン」をセッティングする熊本高専チーム。コンクリートの厚い壁で電波が届きにくいことを考慮し、無線通信の中継器を搭載した小型車を組み合わせることで、ケーブルを使わない制御を目指した。背後には持ち時間を表示する時計。放射線量の多い廃炉作業を想定することから、時間制限も重要な課題となった
◇ロボットの挙動に歓喜
遠隔操作でロボットが順調に動き出し、笑みがこぼれる東京高専チーム。2階に置かれた物体を調べる課題に挑戦し、直接階段を上るのではなく、階段の脇からはしご車のような機構を展開した。調査の結果「スパナ」の発見に成功。競技全体で唯一の課題クリアとなった
◇アイデアの多様性
廃炉という未知な部分を多く含む課題にチャレンジする中で、ユニークなアイデアがいくつも生まれた。写真の函館高専チームは風船とカメラで構成される「気球ロボット」と、陸上を走行するロボットの組み合わせで競技に挑んだ(写真左)
◇最優秀賞は大阪府立大高専
大阪府立大高専チームは、八輪駆動のロボット2機を連結して段差を乗り越えるユニークなアイデアで最優秀賞を受賞した。2つのロボットはロープで連結、後続の機体はカブトムシの角のような機構で、前方の機体を押し上げる。一方、前方の機体は魚釣りで使われるリールのような装置を後部に搭載し、ロープを巻き上げる(写真右)
◇創意工夫をアピール
競技前のプレゼンテーションは着眼点や創意工夫を伝える重要なフィールド。富山高専チーム(写真左)は、床面との接地面積の小さいホイールを使ったロボットを製作した理由として、クローラーよりもメンテナンス性が高いことや、ドローンと比べちりの舞い上がりが少ないことを説明した
◇限られた時間で試行錯誤
競技前の限られた時間の中でも細かい調整を積み重ねる選手たち。写真手前の旭川高専チームは完全自動走行で階段を上り下りするロボットを製作。制御プログラムの確認に余念がなかった
◇期待を抱き
閉会式であいさつする東京電力ホールディングス(HD)の増田尚宏常務執行役・福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント兼廃炉・汚染水対策最高責任者(CDO)。「現場でうまくいくかどうか、準備段階で見極める力を高めてほしい」と学生にエールを送った