
“東京タワー1基分”の鉄骨に匹敵する金属、約4千トンの行き場が見えない。
法令上、一般の金属廃棄物と同様に再利用され、市場で自由に流通(フリーリリース)するはずの「クリアランス金属」。2008年から廃炉が進む新型転換炉ふげん(福井県敦賀市)で発生が見込まれるクリアランス金属4190トンのうち、すでに約700トンが敷地内の倉庫などにうずたかく積まれている。
「倉庫はもういっぱいで置き場所がない」と、日本原子力研究開発機構の毛利直人・技術広報統括。一般に鉄と呼ばれる炭素鋼やステンレス鋼で、原子力機構は品質面でも十分に再利用できるとみる。「今日にでもクリアランス金属を搬出して、世の中で使ってほしい」。一刻も早いフリーリリースの実現を毛利氏は願う。
◇社会的な配慮
健康への影響が無視できるほど放射能濃度が低い放射性廃棄物について、規制解除する行為を「クリアランス」と呼ぶ。05年の原子炉等規制法改正で、原子力規制委員会の確認を受ければクリアランス金属を自由に扱える制度が導入された。
一方、法改正を審議した当時の衆議院経済産業委員会は付帯決議で、制度を広報して地元理解を十分に得るとともに、誤解や風評を防ぐため、丁寧な周知に努めるよう政府に求めた。制度上は自由に使えるはずの金属に、社会的配慮が求められることになった。
以来、クリアランス金属を自由に取引し、再利用するフリーリリースは実現していない。制度への理解を広げるため、少量をベンチなどに再利用する例にとどまり、再利用先も原子力事業者が把握しなければならない。大量の再利用に向けた道は開けていない。このままでは、ふげんの敷地内に新規の保管場所を設け、クリアランス金属をため続ける可能性も出てくる。
◇合理性を欠く
電力関係者は「廃炉が行き詰まってしまう」と危機感を強める。廃炉作業は、解体で生じる廃棄物を放射能レベルに応じて分別し、低いものから順に搬出するのがセオリーだ。法令上は一般金属と同様に扱えるにもかかわらず、専用の保管場所を敷地内で新たに設け続けるのは合理性を欠く。
廃炉が進めば、将来は炉心に近く放射能レベルが比較的高い「L1廃棄物」も発生する。搬出できるものを優先して出さなければ、次の解体物を置く場所が乏しくなり、作業工程そのものを圧迫する。
電気事業連合会によると、全国の廃炉決定済み原子力発電所18基(東京電力福島第一原子力発電所1~6号機を除く)から、2060年代半ばまでにクリアランス金属が合計約13万トン発生すると予測される。東京タワーの鉄骨は約4千トン。実に約33基分の膨大な量になる。
政府は7月末に改正した原子力政策の方向性と行動指針で、再利用実績の積み上げや積極的広報を通じ、「クリアランス制度の社会定着・早期フリーリリースを実現する」と掲げる。制度導入から約20年、廃炉の現場に時間的余裕は少ない。福井県や県内の事業者が、全国に先駆けて動き出した。(近藤圭一)
◇
東京タワー約33基分に相当する約13万トンの発生が見込まれるクリアランス金属の搬出、再利用に向けた課題が山積している。クリアランス金属の集中処理事業で廃炉を進め、福井県の産業振興を図る「福井モデル」を取材した。
電気新聞2026年8月19日





