ドローンは、ダムや配電線などのインフラ設備の点検や災害調査での活用に向けた実証を重ね、社会を支える不可欠な存在として進化してきた。非GPS環境下での自律飛行や高精細映像(12K画像)、長距離通信といった技術も高度化し、ドローンやロボットの活用は「検証段階」から「社会実装」の実働フェーズへ移行している。九電ドローンサービス(QDS)はフィジカルAI(人工知能)時代を見据え、独自の機体開発や専門人材の育成を通じて次世代ドローンサービスの確立を進め、人とドローンが共存する社会の実現を目指していく。

 (1)ドローンの性能の進化

 ドローンは今「特殊な撮影機材」から「なくてはならない社会インフラ」へと進化を遂げ、役割も大きく変えつつある。

 従来GPSに依存した姿勢制御が主流だった飛行技術は、全方位の障害物回避センサーやビジュアルSLAM技術の導入により、GPSが受信できない環境でも安定した自律飛行が可能になってきた。さらに、水素燃料電池の開発や衛星通信(Starlinkなど)への対応が進み、数十~数百キロメートル規模の長距離飛行の実現も期待される。

 搭載機材は、8Kや12Kカメラの開発で高精細映像の取得が可能になり、数十倍の高倍率ズームも普及してきた。遠くからでも設備の細かな部分を確認でき、点検や調査の精度向上につながっている。

 近年は、ガスや化学物質を検知するセンサーの搭載や、ロボットアーム取り付けなどの改良が進んでいる。ドローンは「撮影機材」から、情報収集や作業支援を行う多機能な装置へと役割を広げつつある。

 ドローンは今、生活を支えるスタンダードとして社会実装の実働フェーズに入りつつある。~空を見上げればドローンが飛んでいる~という光景は、もはや遠い未来の話ではない。

 (2)QDSの新たな挑戦

 屋内点検分野でのドローン活用に向けた技術開発も動き出している。QDSは2025年12月から、屋内の狭小空間での飛行技術を持つ国内ドローンメーカー・Liberaware(リベラウェア)と連携し、ドローン機体およびソフトウエアの共同開発を進めている。

 狭小空間での自律飛行機能を備えたドローン開発に加え、屋内を自動巡回するためのドックの開発にも取り組んでいる。点検業務の省人化や常時監視への応用を見据え、近い将来の実装化を目指す。

 一方、ドローンの社会実装が進展する中で、現場で即応できる人材の確保と育成も重要なテーマとなっている。こうした課題に対応するため、QDSは26年4月、ドローン人材の育成を目的とした「九電ドローンアカデミー」を開設した。

 国家資格の取得にとどまらず、特殊ドローンの操縦技術や現場特有のリスクを踏まえた安全管理までを体系的に学ぶ独自の認定講習を展開予定である。技術と運用の両面を備えた人材育成は、ドローン活用の裾野を広げていく鍵となる。

 (3)次世代ドローンサービスに向けて

 政府は年頭の政策方針の中で、AIをドローンやロボットに搭載する「フィジカルAI」を成長戦略の柱に位置付け、官民一体での投資を進めている。

 この技術が進展すれば、従来人が担ってきた点検や施工といった作業が、将来的にはドローンやロボットが自律的に実働する形へと移行。次世代の「ドローンサービス」が創出される可能性が高まっている。

 具体的には、フィジカルAIの活用により、インフラ設備の全自動メンテナンスの実現が現実味を帯びてくる。トンネルなどの非GPS環境下でも、ドローンが定期的に自動巡回し、リアルタイムの映像からひび割れなどの異常を自ら判断。取得したデータをロボットへ即時に共有し、補修作業までを自律的に行うといった運用が想定される。これにより、従来よりも迅速かつ能動的なインフラ保全が可能になる。

 こうしたフィジカルAI時代を見据え、QDSはエッジAIを搭載した次世代のドローン・ロボットの開発やその次世代を担う人材育成、多様なステークホルダーとの共創を通じ、次世代ドローンサービスの確立に取り組んでいく。(この項おわり)

電気新聞2026年6月1日