イベリア半島の大規模停電から半年が過ぎた。電圧上昇への調整能力の不足が第一の要因と指摘されている。一般的に周波数や電圧の低下により大規模停電は起こる。電圧上昇が起因するのは特異だ。電力中央研究所の永田真幸首席研究員は「電圧を適切に維持するよう調整能力を確保するなど、日本で今できていることを当たり前に続けていく重要性が示された」と強調する。(高橋恭平)
大規模停電は4月28日の昼に発生。3度の連鎖的な電源脱落によって、停電範囲はスペイン、ポルトガルの全域に及んだ。
教訓と考えられる事項はいくつか示されている。その一つが電圧上昇だ。交流電力の系統電圧を調整する一番の担い手は電源。このケースであれば電圧を下げる能力が求められた。ただ、停電当日のスペインは火力発電などの「同期電源」が、今年に入ってから最少の並列台数だった。一方で、その代わりとなる再生可能エネルギーなどの「非同期電源」は大量に連系していた。再エネ側で電圧調整できれば問題は少なかったと推測できるが、スペインでは同期電源と同様の電圧調整能力がルール上、非同期電源に求められていなかった。
◇日本は異なる
日本でも今回と同様の事象は起こりうるのか。永田氏は計画的なリアクトルの設置や運用面の対策を講じており「電圧上昇により大規模停電に至ることは当面考えにくい」と分析する。基幹系統に連系する電源は、非同期電源を含め電圧の一定制御を求めるルールも定められている。今回の大規模停電とは別に、スペインでは以前から基幹系統の電圧上昇により電源脱落が生じていた。日本では少なくとも近年、こうした事例はないという。
もう一つ、大規模停電の背景として焦点が当たっているのは「系統動揺」の影響だ。スペイン政府が6月に公表した報告書では、ドイツを含めた広域の系統動揺が、大規模停電の10分ほど前に生じていたことが示された。その対応によって電圧上昇に至った可能性が指摘されている。
◇抑制に有効も
送電線の並列、リアクトル解列といった対応は系統動揺の抑制に有効だったが、電圧を上昇させる副作用になったとみられる。永田氏は「カーボンニュートラルに向けて再エネがさらに拡大すれば、系統状況も変化する」と述べ、広域動揺の課題が顕在化しないよう対応していくことが必要と主張する。
欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO―E)は5月にイベリア半島停電に関する調査を開始。10月に中間報告書を公表したが、原因への評価は示されていない。来年3月までに最終報告書をまとめ、原因分析や調査結果に基づく勧告を示す方針だ。
電気新聞2025年11月14日





