トランプ米政権は現地時間11日、バイデン前政権などが火力発電所に課していた温室効果ガス(GHG)の排出規制を撤回する案を公表した。バイデン政権の排出規制は2039年以降も稼働する石炭火力やガス火力に対し、32年までにCCS(二酸化炭素回収・貯留)を稼働させるよう求めていた。この規制がなくなることで、廃止を延期する火力発電所が増える可能性がある。
撤回案は、45日間のパブリックコメントと修正を経て最終決定される。EPAのリー・ゼルディン長官は「排出規制は偏狭な気候変動主義に合わない産業を破壊するのが主な目的だった」とし、排出規制の撤回で年間約12億ドル(約1700億円)の規制コスト減少につながるとも主張した。
オバマ、バイデン政権時代につくられ、現時点で効力を持つ火力発電所向け排出規制が対象となる。トランプ政権は既設石炭火力とベースロード運転する新設ガス火力の排出規制のみ撤回する「代替案」も用意しており、どちらを採用するかは政権が今後判断するとみられる。
今回の排出規制撤回案について、電力中央研究所の上野貴弘上席研究員は「『危険性認定』とは別の理屈を持ち出すことによって、火力の排出規制の必要性を否定している」と説明する。
危険性認定とは大気浄化法に基づいて行うもので、民主党政権が火力発電所や自動車に排出規制を掛ける上での根拠としていた。EPAは3月に同認定の再検討に着手しており、この見直しが進めば、今回の排出規制撤回の「補強になる」(上野氏)という。
今後、民主党系の司法長官がいる州などが規制撤回を違法として訴訟を起こす可能性があり、決着までには数年程度かかるとみられる。
ただ、訴訟中も最終決定をした排出規制撤回は効力を持つ。日本の環境省関係者も「予定されていた火力の廃止延期につながる可能性はある」と話す。
電気新聞2025年6月16日





