「大熊食堂」で帰還後押し/町民、作業員の憩う場所に

2017/08/08

鳥藤本店が町民と復興作業に従事する作業員に開放した大熊食堂

<写真説明>鳥藤本店が町民と復興作業に従事する作業員に開放した大熊食堂

 東京電力福島第一原子力発電所が立地し、福島第一事故後は避難区域となっている福島県大熊町で唯一の食堂が「大熊食堂」だ。東京電力社員寮の食堂で給食を提供してきた鳥藤本店(福島県富岡町、藤田秀人代表取締役)が、一時帰宅した住民や地域の復興に携わる作業員に利用してもらえれば、と4月に食堂を開放した。鳥藤本店の森敬信・営業部課長は、「町民や作業員の憩いの場になるようにしたい」と笑顔を見せる。

 東電寮と大熊食堂があるのは、大熊町の大川原地区。大熊町は福島第一事故の影響で町域の大半が帰還困難区域となっているが、町は比較的放射線量が低い大川原地区を復興拠点と位置付けて、開発を進めている。大川原地区には、東京電力の協力企業も事業所を設置している。

 鳥藤本店は、昨年夏に整備された東電の社員寮で、寮に入る約750人に朝食と夕食を提供してきた。ただ、周辺には飲食店がないため、東電と協議して平日の昼時間帯に食堂を開放することを決めた。

 同県富岡町に本社を置く鳥藤本店は、福島第一事故前から給食業務や弁当の仕出しを行ってきたが、関係先からも「大熊町に食堂がほしい」という声が多く寄せられていたという。

 大熊食堂として営業する昼時間帯には、3種類の週替わり定食、麺類、カレー、丼を提供する。食材は福島県産米を使用するなど、できるだけ地元の食材を利用しているという。

 飽きがこないようにするため、週替わり定食の調理方法を変えたり、食材がかぶらないようにしたりといった工夫も凝らす。限られた昼休みを利用して足を運ぶ作業員も多いため、「お待たせしないような調理オペレーションにしている」(森課長)という。

 食堂に併設された売店では、生活用品やパン、インスタントラーメン、飲み物なども販売し、利便性も高めた。

 現在は、1日当たり100人程度が食堂を利用しており「一時帰宅している地元住民だろうなという方もよく見かける」(藤田大専務取締役)という。今後も食堂の運営などを通じて、町の復興と住民の帰還を後押ししたい考えだ。

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