Jヴィレッジ18年夏再開/天然芝回復、総合施設化へ

2017/08/08

緑に色づいた芝生を前に笑顔を見せる山内課長

<写真説明>緑に色づいた芝生を前に笑顔を見せる山内課長

 東京電力福島第一原子力発電所の事故対応拠点として活用されてきたサッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)。現在は駐車場や資材置き場として利用されたフィールドに緑の天然芝を復活させるための作業が進む。今後は、新宿泊棟や全天候型練習場を新設して2018年夏に一部再開する予定だ。運営会社Jヴィレッジの山内正人・管理課長は「最終目標はJヴィレッジだけじゃなく、地域全体がにぎわうこと」と復興への思いを語る。

 同社は再開後のJヴィレッジを総合スポーツ施設として、サッカー以外のスポーツ団体などにも利用を促す方針。ドローン(小型無人機)の試験場としての活用なども模索している。

 Jヴィレッジは、20年東京五輪の男女サッカー日本代表が事前合宿地として利用することも決まっている。福島県は、19年に国内初開催となるラグビーワールドカップ日本大会の事前合宿誘致も目指している。

 明るい話題が増えつつあるJヴィレッジだが、課題も多い。福島第一事故から6年が経過した今、事故以前にJヴィレッジを利用して行われていたスポーツ関係の大会や資格講習は、他の施設で行われるのが通例になっている。取り戻すのは簡単ではない。

 山内課長は「働き手の確保も非常に頭が痛いところ」と話す。Jヴィレッジでは震災前、120~130人が働いていたが、再開後は新宿泊棟の開業で客室数が90から200に増えるため、約150人が必要になる。実際に採用活動を行うのはホテル事業の運営受託会社だが、Jヴィレッジも採用をサポートしていく方針だ。

 山内課長は福島第一事故以前、Jヴィレッジでホテル事業を請け負う企業に勤めていた。事故で職を失ったが、直後に声を掛けてくれたJヴィレッジの運営会社で働くことを決心した。

 車や資材で埋め尽くされたフィールドを見るたびに「Jヴィレッジの再開が難しくなっていくのではないか」という思いが湧いてきたが、復興プロジェクトが立ち上がったときに、ようやく再開に希望を感じた。

 現在、Jヴィレッジには一部のピッチに張られた天然芝が緑に色づき、再開を実感できるところまで来た。「Jヴィレッジの再開は、福島に対するネガティブなイメージを払拭する力になる。ここで事業をすることで、福島が安心・安全だと伝えたい」

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