

鉄塔のシルエットが好きだ。
小学生の頃から、馴染みある道を歩きいつもの空を見上げるたび、その組み上げられた鉄骨の堂々と聳え立つ姿にひそかに憧れを抱いていた。
学生時代の自分といえば、思春期らしくしっかり揺らいでいた。人の言葉に惑わされ、簡単に意見も変えられた。物事を深く考えず、心では「どこか違う」と感じていることも、静かに蓋をして仕舞い込んでいたように思う。
しかし鉄塔は、光に焼かれる夏の日も、闇に沈む雨の夜も、凍てつく冬の日も、いつも鉄塔であり続ける。特に夕暮れ時、マジックアワーの空に染まりゆく姿はひときわ美しかった。あまりにも自分とは対照的で、情けなくも思ったものだった。
高校を入学する前にひとつ、自分と約束したことがある。「人の悪口を言わない」。とてもシンプルなものだ。頼もしい鉄塔に見守られ、やがて少しずつではあるが、自分の軸と呼べるものを掴み始めていた。
時を経てシンガーソングライターとなった私は、ある時「鉄塔」という曲を書き上げた。人生とは数奇なもので、遠き日の心象風景を歌という形に変えて放ったら、これが思いがけぬ多くの出逢いを呼び起こすことになる。その話は、また折りを見て綴ってゆくつもりである。
これから一年間、生きることと創作の狭間で見つけた琥珀色に灯る記憶を、ここに書き記してゆきたい。この便りが、あなたの掌にもやさしくおさまるように。
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このたびの熊本地震、千葉豪雨により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。今なお不安な日々を過ごす方々の心に、一日も早くあたたかな平穏が戻りますよう、深く祈っております。

◇シンガー・ソングライター 南壽あさ子
NHK「みんなのうた」で発表した楽曲『鉄塔』は、子の成長を願う親たちだけでなく送電業界でも鉄塔に前向きな印象を与えるものとして浸透した。電気の語源は琥珀(エレクトロン)に通じる。作詞・作曲したシンガー・ソングライターの南壽あさ子さんが1年間、音楽活動や人生に寄り添う電気との関係について、琥珀に思いを乗せて便りを届ける。





