再生可能エネルギーの中でも、天候に左右されずに安定供給が可能な地熱発電は、脱炭素化を支える重要なベースロード電源である。近年では、熱水や蒸気が乏しい地域でも開発可能な次世代型地熱技術が世界的に進展し、日本でも導入拡大への期待が高まっている。第2回の本稿では、クローズドループ、EGS、超臨界地熱といった新技術の動向と課題、そして日本における次世代型地熱の実現に向けたロードマップと発電コストの目標を整理する。
地熱発電は、安定性と国産エネルギーとしての価値から、脱炭素社会に向けた重要な電源として再評価が進む。特に近年は、従来型地熱では開発が難しかった地域でも利用可能な次世代型地熱への期待が高まっており、クローズドループ、EGS(Enhanced Geothermal System)、超臨界地熱の3つは世界的に研究開発が加速している分野である。
クローズドループは、地下に閉じた配管を設置し、地熱貯留層の流体の存在に依存せず熱を回収する方式である。熱水や蒸気が存在しない地域でも開発できるため、適地拡大の効果が大きい。一方で、貯留層における継続的な熱供給、発電量に見合う掘削コストの低減などが課題として挙げられる。
海外では、加Eavor社が独自のクローズドループを開発し、カナダと米国での実証を経て、ドイツのバイエルン州ゲーレッツリート市にて世界初の商用クローズドループ発電施設を建設している。また、米GreenFire Energy社は同軸二重管方式で毎分300~350ガロンの流量と華氏310度(摂氏154度)という予想以上の出力を確認するなど、実証が進んでいる。
◇商用化へ効率向上
EGSもまた、熱水・蒸気が乏しい地域での開発を可能にする技術である。人工的にき裂を造成し、循環流体を通すことで熱を回収する仕組みだ。課題としては、発電量に見合う掘削コストの削減、自然き裂の活用や人工貯留層造成などによる増新手法の確立、循環流体の回収率向上などが挙げられる。
海外では、米国エネルギー省(DOE)がEGSの発電コストを90%削減し、1000キロワット時当たり45米ドル(1キロワット時当たり約6.5円)まで低減する目標を掲げている。また、米Fervo社は独自技術により、従来技術の3倍の熱回収効率(50~60%)を実現し、商用化に向けた進展を示した。
さらに、超臨界地熱は従来型より高温・高圧の資源を利用することで、大出力の生産能力や発電コスト低減が期待される。課題は、高温・高圧に耐える掘削・生産技術の確立や、事業性を担保する掘削・発電技術の開発である。
海外では、アイスランドのIceland Deep Drilling Project(IDDP)で超臨界の掘削コストが試算されている。また、ニュージーランドのEarth Sciences New Zealand(ESNZ)が基礎研究開発を進め、2026年末までに試験井の掘削を計画している。

◇目標、ベース電源並
日本においては、25年10月、次世代型地熱推進官民協議会において、次世代型地熱の実現に向けたロードマップが策定された。投資促進や革新的な技術導入を図ることにより、フェーズ1として30年までに国内で先行導入、フェーズ2として30年代早期の次世代型地熱の運転開始、フェーズ3として国内普及と地熱発電の抜本的な導入量拡大を図り、35年から50年にかけて約770万キロワットの開発を目指している。
また、発電コストについては、次世代型地熱が従来型地熱と同等の1キロワット時当たり13.8~36.8円を可能な限り早期に達成することが目標となる。さらに将来的には、他のベースロード電源と競争可能な1キロワット時当たり12~19円を目指すことになっている。
次世代型地熱は、技術課題を克服すれば、日本のエネルギー構造を大きく変える潜在力を持っている。世界的な技術革新の波を捉え、国内での実証と導入を着実に進めることが求められている。
電気新聞2026年6月29日





