プラントやインフラ点検の現場でドローンやロボットの活用が進んでいる。九電ドローンサービス(QDS)は、国内化学プラントで初となる米国製ドローンによる自動巡回パトロールをはじめ、発電所の狭小・暗所空間での点検技術を、下水道などインフラ設備の点検へ応用する取り組みを展開。ドローン飛行が困難な環境では、ロボットを用いた作業の検証を進めるなど、現場環境に応じたソリューションで社会インフラ設備の保全業務の高度化(DX・デジタルトランスフォーメーション化)に貢献したい方針だ。


 (1)国内初、化学プラントでの自動巡回

 某国内化学メーカーでは広大なプラント設備の巡回パトロールを、作業員が1回当たり2~3時間かけて徒歩で実施している。このため点検品質のばらつきなどが課題となっていた。

 この課題を解決するため、同社は米国製の自動巡回ドローンSkydioX10とドック(自動離発着基地)による巡回パトロールを導入した。ドックは、ドローンを収納から充電、飛行制御、自動離発着まで行う設備。あらかじめ飛行ルートを設定して、定期的な自動巡回パトロールが可能となる。

 QDSは、保有するインフラ設備保守の知見などを生かし、プラント設備に応じた安全性の高い飛行ルートの提案、ドックに必要な電波環境の調査、顧客の運用に合わせた運用マニュアル作成、講習会の実施――によって早期運用の実現に取り組んだ。現場調査から運用まで幅広く顧客に合わせてカスタマイズすることで、点検品質の均一化や作業者の負担軽減、現場点検時間の短縮を実現した。

 化学プラントに関しては、SkydioX10とドックによる自動巡回パトロールの運用を開始した事例は国内初。今後もプラントや発変電所などで導入・拡大が見込まれている。

 (2)特殊ドローンを活用した屋内設備点検

 発電所のボイラーや煙突内部といった屋内点検を行うには、従来、足場を設置し高所にある設備を人が点検していた。この方法は、高所からの墜落リスクや発電所停止の長期化などが課題となっていた。

 QDSには、特殊ドローンの操縦者が10人程度在籍。屋外・屋内設備の点検サービスに対応可能だ。屋内点検では、非GPS環境下で飛行可能な球体型ドローンELIOS3(スイス製)や超小型ドローンIBIS2(日本製)などの特殊ドローンを活用した現場作業で、課題解決に取り組んでいる。

 中でも、老朽化した下水道インフラ設備は水道管内の有毒ガスの発生や増水リスクを伴う危険な環境。人による点検では安全かつスピーディーに点検を行うことが困難だった。特殊ドローンを活用すれば、この課題が解決できると注目される。

 なお、下水道インフラ設備点検には、リアルタイムに取得した管路内部の点群データや3Dモデルを活用して、管路壁面のクラックの位置を特定。0.1mm単位のクラック幅の診断を可能にするなど、社会インフラ設備の維持管理の高度化を実現している。

 (3)ロボットの活用

 水力発電所では、大規模地震(震度4~5弱以上)発生後に導水路内部の巡視・点検を行っている。この巡視・点検の際には、導水路の崩落や酸欠といった命に関わるリスクがあり、安全の確保が課題だった。

 QDSは、導水路内部の環境でも自動走行が可能なオリジナルの四輪自動走行ロボット「HANABI(ハナビ)」をメーカーと共同開発した。人が入構しなくても、安全かつ効率的に内部点検できるロボットだ。

 HANABIは4台の防水性カメラとともに、レーザーを照射して周囲をスキャンし自分の位置と周辺地形を同時に把握可能な「SLAMレーザー」を搭載。SLAMレーザーの点群データを用い、リアルタイムに構造物を認識しながら導水路内部の中央を走行できるものだ。

 QDSは、屋外・屋内設備において多種多様なドローン・ロボットを活用した現場作業の実績をもとに、現場環境に応じたソリューションを提供。こうした取り組みによって、社会インフラ設備の保全業務の高度化(DX化)に貢献している。

電気新聞2026年5月25日