経済産業省・資源エネルギー庁の有識者会合で、中東情勢を踏まえた電力安定供給対応の議論を巡り、石炭火力の重要性を指摘する委員が相次いだ。ホルムズ海峡に依存しない石炭は原油や天然ガスより価格の上昇幅が低く、有事への耐性の高さを鮮明にしている。脱炭素政策を進めても石炭火力を維持できる措置の必要性を訴える声も上がる。

 20日の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会で、事務局は容量市場による非効率石炭火力の稼働抑制措置を2026年度に適用しない緊急対応を紹介した。委員の田中加奈子・アセットマネジメントOneサステナブル投資戦略部シニア・サステナビリティ・サイエンティストは有事対応に理解を示しつつも「長期的に脱炭素投資と矛盾しないよう、例外対応が常態化しないような出口戦略が必要」と唱えた。

 これに対し、委員の竹内純子・国際環境経済研究所理事・主席研究員は「田中委員とは違う意見だ」と前置きしながら「これまでのエネルギー政策議論で反省すべきは、水素や再生可能エネルギーが戦力になるまで時間を要するのに、(石炭の)出口戦略を先に議論しすぎたことだ」と指摘した。石炭火力を保有することの重要性を強調しながら「石炭利用は腰が引けた状態だ。正面から長期的な戦略を議論すべき」と提起した。

 ◇LNGを節減

 事務局は非効率石炭火力の稼働増により、LNGを年間で約50万トン節約できるとの試算を示した。

 足元の燃料価格動向として、イラン問題後に原油価格が50%超、アジアLNGスポット価格が66%上昇したのに対し、オーストラリア石炭先物価格の上昇が13%にとどまるデータも紹介した。エネルギーの量と価格の両面から、石炭のホルムズ海峡封鎖への耐性を示した。

 脱炭素政策より安定供給が優先といった主張も出た。委員の神山智美・富山大学教授は非効率石炭火力の稼働増と排出量取引制度との関係を例に「(発電事業者は)安定供給に協力すれば脱炭素政策に対応できない。単純にマイナス評価されない仕組みが必要だ」と唱えた。

 委員の圓尾雅則・SMBC日興証券マネージング・ディレクターも「もし今回の有事が数年後に起き、排出量取引制度の本格化によって石炭火力の撤退が進んでいれば怖い状況だった」と危機感を示した。「不測の事態がいつ起きるか分からないと何度も経験してきた。新設電源が立ち上がるまで石炭火力の容量を確保してもらうためのインセンティブを本気で考えるべきだ」と説いた。予備電源制度では不十分とした。

 ◇多角化生きる

 専門委員の外野雅彦・経団連資源・エネルギー対策委員会企画部会長は、日本のLNG輸入のうち、ホルムズ海峡経由が約6%にとどまることを前提に「調達先の多角化の強みが生きた」と評価した。その上で再エネや原子力、石炭を挙げて「政策対応の方向は、我が国の実情を踏まえたベストミックスの追求に尽きる」と強調した。

電気新聞2026年5月22日