原子力発電所の定期検査の間隔を現状の13カ月から延長する「長期サイクル運転」の実施にめどが立った。懸案だった配管亀裂に関する議論に一定の方向性が見え、保安規定変更など、事業者が具体的な手続きを進められる環境が整いつつある。原子力エネルギー協議会(ATENA)は、まずPWR(加圧水型軽水炉)を対象に、現状から2カ月延ばした「15カ月以内」を想定する。実現すれば設備利用率向上だけでなく、電力の供給安定性や安全性向上にも大きく寄与する。
長期サイクル運転の制度的な枠組みは、既に整備されている。2009年に旧原子力安全・保安院のワーキンググループが発足。定期事業者検査報告の提出と保安規定変更認可手続きにより導入可能との見解を示した。
また、原子炉設置変更許可がなくてもPWRは15カ月、BWR(沸騰水型軽水炉)は18カ月まで延長可能なことを確認。これを踏まえ、10年には東北電力東通原子力発電所1号機が導入手続きを始めたが、東日本大震災の発生を受けて申請を取り下げた経緯がある。
再び動きがあったのが21年。6月の原子力規制委員会と主要原子力施設設置者の原子力部門責任者(CNO)との意見交換会で、事業者側は技術的課題の整理など、実施に向けて取り組む方針を表明した。
だが22年、原子力規制庁との面談で、事業者側は慎重な対応を求められた。20年に発生した関西電力大飯発電所3号機の加圧器スプレイ配管溶接部での亀裂について、検討を深める必要性を指摘された。これを受け、事業者はATENAを中心に調査・研究を進めていた。
調査では延べ1100カ所以上の溶接部で超音波検査を実施したが、類似の兆候は確認されなかった。こうした知見を基にATENAは今年3月、亀裂を受けて導入していた特別検査の頻度見直しを提案。同月のCNO意見交換会合で、長期サイクル運転についても一定の範囲内で実施の見通しがついたと報告した。規制庁は近く、この提案に対する見解と対応方針を規制委定例会合で示す方針だ。
長期サイクル運転が可能になれば、15カ月の範囲内で柔軟に定期検査のタイミングを設定できるようになる。設備利用率の向上に加え、夏や冬の高需要期の定期検査を回避でき、供給安定性が高まる。さらに、発電所間で定期検査時期の重複を避けることで熟練作業員を安定的に確保でき、メンテナンスの高品質化による安全性向上にもつながる。
実施に当たって事業者は、定期事業者検査報告の提出に加え、保安規定の変更認可審査で燃料条件の変更に伴う実効線量評価や安全解析結果を説明していくことになる。一方の規制側は、事業者の延長評価の妥当性などを確認した上で告示を改正する必要がある。
先行して実施に乗り出す事業者は、関西電力や九州電力が有力とみられる。
ATENAは電気新聞の取材に対し、「今後事業者において準備が整い次第、必要な手続きが行われる。共通課題などが生じた場合は、必要に応じてATENAとしても対応を検討していく」としている。
電気新2026年4月17日





