日本が輸入する火力発電用石炭のサプライチェーンを巡り、供給と輸送の両面で課題が浮上している。発電用の石炭は「一般炭」と呼ばれ、輸入量の過半をオーストラリアが占める。現地では採掘の深部化による生産コスト増や政府に支払う資源採掘料率(ロイヤルティー)の引き上げ、市況低迷などを背景に事業者の採算が悪化。輸送面では石炭運搬船への投資停滞リスクが指摘され、供給網の縮小を懸念する声も聞かれる。(西村篤司、匂坂圭佑)

日本の一般炭輸入量は2023、24年と2年連続で増加。24年は夏季の猛暑による電力需要増などで輸入量が増え、1億2030万トンだった。このうち豪州産の割合は62.3%に上る。政府は第7次エネルギー基本計画で、非効率石炭火力の発電量を減少させる方針を示す一方、電力の安定供給と経済性の観点では「引き続き重要なエネルギー源」と位置付ける。一般炭の確保に向けては日本企業の権益取得を促し、40年に自主開発比率60%維持という目標を掲げる。加えて、売買取引で3年以上の期間を目安とする長期契約の確保も呼び掛けている。
◇代替が困難
日本にとって一般炭の生命線となる豪州産は、水分が少なく熱量の高い「高品位炭」とされる。日本の石炭火力設備は、これに合わせた仕様となっており、他国産の石炭で代替するのは難しい。このため、豪州一般炭の供給網維持は必須で、大手発電事業者の幹部も「熱量の低い低品位炭との混焼は可能だが上限はあるため、豪州産の高品位炭は不可欠」と話している。
豪州一般炭を巡っては、中国やインドを含むアジア市場の需要低迷により市況が軟化傾向にある。取引価格が伸びない中でロイヤルティーの上昇もあり、石炭事業者の収支を圧迫。環境規制の強化によって新規開発に向けた許認可手続きも厳しくなっており、将来的な供給力に対する不透明感が高まっている。
◇投資停滞も
さらに、輸送面では石炭運搬船への投資停滞リスクが指摘されている。日本の発電所向けには「幅広船」と呼ばれる特殊仕様の専用船を運航。水深の浅い日本の港湾に対応しつつ、より多くの石炭を積載できる仕様となっている。現在運航中の船の老朽化が進む一方で、新規建造への投資が進まなければ30年代には輸送力が激減。大手海運関係者によると、船の数が現状の2~3割まで減少する可能性もあるという。
これら一般炭の供給面、輸送面の指摘に対し、経済産業省・資源エネルギー庁の関係者は「現時点で一般炭のサプライチェーン縮小は顕在化していない」と認識。別のエネ庁幹部は「古くて新しい課題。必要に応じて対策を講じている」と話す。
石炭は将来的にフェードアウトしていく方向性が示されているが、その過程で一定量必要であることは供給側と需要側の共通認識だ。発電用燃料取引のコンサルティングを手掛ける水上裕康氏は、「LNGがトランジションエネルギーとして認知される一方で、石炭のサプライチェーンに関しては忘れられた存在になってはいないか」と指摘。豪州一般炭について、厳しい気候変動政策を進める連邦政府の姿勢に言及しながら「日本への大規模な石炭輸出を維持するには、官民双方で理解を求めていくことが必要」と訴えている。
◆メモ/石炭供給を巡る懸念
・日本の輸入量の過半を占める豪州産の事業採算性が悪化。将来的な供給力に対する不透明感の高まりが懸念されている
・輸送面では石炭運搬船への投資停滞リスク。30年代に現状の2~3割まで減少する可能性も
・経産省は「現時点でサプライチェーン縮小は顕在化していない」との見解。40年に自主開発比率60%維持が目標
電気新聞2025年11月19日





