9月に発生した北海道胆振東部地震の際、携帯電話、スマートフォンの充電先を求めて、電源の供給されている建物に、被災者の方が集まっている光景がテレビで報道されていた。携帯電話が広く使われるようになって20年程度、スマートフォンは10年程度だが、移動通信は生活の一部になり、皆が手放せないものになっている。一方で、移動通信の技術は、着実に進歩しており、アナログ通信であった第1世代から、現在は第4世代が主流となり、今、第5世代(5G)の開発が進んでいる。5G移動通信とは何か。社会をどう変えるのか。
 

1Gから4Gまでを振り返る

 
グラフ_移動通信の進化_4c

 移動通信の歴史をふり返ってみよう。移動通信は、1979年にサービスを開始した自動車電話がスタートといえる。この端末は車のトランクに入るのが精いっぱいの巨大なもので、値段も非常に高く、ごく一部の富裕層しか使えないものであった。80年代後半になって肩にかけられるショルダーフォンができ、持ち歩けるようになったが、まだまだ重く大きく、値段も高かった。

 89年には手のひらにのる大きさの端末、いわゆる携帯電話が登場。99年には、iモードに代表されるコンテンツサービスの登場で、携帯は電話ではなく、インターネットの端末に変化していく。さらに2000年代後半には、スマートフォンが登場。キャリアが全てのサービスを提供していた世界から、ベンダーのプラットホームからダウンロードしたアプリでサービスを享受する時代に進化することになる。

 無線技術の面からみると、高い周波数を中心に新しい周波数帯の開放があり、それにより広い帯域が使用できるようになった。さらに変調方式が高効率となり、どんどん高速化が実現してきた歴史である。

 最初はアナログ(第1世代=1G)であったが、デジタル(第2世代=2G)となった。そして第3世代(3G)のころから、音声に加えてデータサービスが始まる。現在の第4世代(4G)では、高品質の動画を、地下鉄の車内でも楽しめるようになった。これは地下にもアンテナを配置し、電車の移動に従いアンテナを高速に切り替えて初めて実現できるもので、移動通信の歴史の中でも画期的な進歩である。
 

3つの利用シナリオを組み合わせて、Society5.0社会が実現する

 
 これらをさらに発展させるのが、第5世代(5G)である。2015年に国連の機関であるITU―Rにおいて、5Gの利用シナリオや技術要件など開発の方向性を示す「IMTビジョン勧告」が承認された。それには、超高速(eMBB)、多数同時接続(mMTC)、超低遅延(URLLC)の利用シナリオに加え、それらを組み合わせた利用イメージが示されている。この勧告を受けて、標準化団体である3GPPnでは、それぞれのシナリオに対する要求条件を規定している。

 eMBBは通信の高速化・大容量化を含めたモバイルブロードバンド化を目指したシナリオであり、下り20ギガビット/秒、および、上り10ギガビット/秒が要求条件で、4Gと比較して20倍に相当するスピードだ。

 mMTCは、各種センサーや家電機器などの様々な端末が、インターネットを介して大量につながるIoT(モノのインターネット)を考慮したシナリオであり、1平方キロメートル当たり100万台の端末接続が要求条件となっている。

 URLLCは自動車運転、産業用ロボット、遠隔医療など高いリアルタイム性や信頼性が要求されるミッションクリティカルサービスをサポート・アシストする使い方を目指したシナリオであり、ユーザープレーン遅延1ミリ秒でブロック誤り率10マイナス5乗の要求条件が規定されている。

図_5Gの要求条件_4c

 このように高い能力を持つ5G移動通信は、国が目指すサイバーとリアルが融合する社会Society(ソサエティー)5.0での各種サービスを実現する鍵となると考えられている。この連載では、5Gの技術とそれがもたらすだろう世界について、紹介していきたい。

【用語解説】
◆ITU-R
International Telecommunication Union-Radio communication Sector。国連専門機関の一つの国際電気通信連合(ITU)の無線通信部門

◆3GPP
3rd Generation Partnership Project。移動通信の標準化団体。3G(第3世代移動通信)の標準化のために設立されたが、4G、5Gの標準化も行っている。

電気新聞2018年12月3日