[ウクライナショック]識者の見方/大場 紀章氏

自動車・半導体不足も影響注視


大場 紀章氏

 

大場 紀章氏
ポスト石油戦略研究所代表・エネルギーアナリスト


 

 直接的にはこれまで同様に欧州向け天然ガス供給が低水準で推移し、欧州発のガス価格危機が継続する。その影響で石炭価格も高水準が維持される。戦闘行為の結果などでウクライナ・黒海経由の日量100万バレルの原油供給が脅かされたり、ロシア石油、ガス輸出(世界取引量に占めるシェアは各11.4%、25.3%、2020年)を規制する制裁が発動したり(米国務省は否定していると伝えられる)すれば、リスクプレミアムを超え1バレル=100ドルを大きく上回る事態もあり得る。

 一方、ロシアとウクライナは自動車、半導体産業のグローバルサプライチェーンに組み込まれており、産業用資材の供給不足で逆にエネルギー価格が下落する可能性もある。日本政府は資源価格高騰対策として石油元売りへの補助金を増額する予定だが、根本的な解決にならない。

 日本にできることは再稼働を控える女川2号や高浜1、2号などの原子力を早期稼働し、LNG輸入量を抑制することぐらいしかない。現在日本は原油の3.6%、LNGの8.8%(21年)をロシアから輸入するが、本来なら中東依存度を下げる供給多様化先として重要な相手。米主導の制裁にどこまで付き合うべきか、戦略的外交判断が問われる。

(談)


電気新聞2022年2月28日