[ウクライナショック]識者の見方/有馬 純氏

「1.5度目標」絶対視に疑問


有馬 純氏

 

有馬 純氏
東京大学公共政策大学院特任教授


 

 欧州でのエネルギー危機は昨年秋から起こっていたが、ウクライナ侵攻で火に油が注がれた。世界でエネルギー安全保障が喫緊の課題となった。ドイツ連立政権で、緑の党のハーベック経済・気候保護相が原子力と石炭火力の廃止時期の延長を示唆したのは象徴的だ。

 ドイツは原子力と石炭の代わりに再生可能エネルギーとロシア産ガスで補おうとした。欧州中核国のドイツがロシア依存度を高めたのはロシアがウクライナ侵攻を決断した材料の一つになっただろう。米紙ウォールストリートジャーナルは「ドイツの自滅的なエネルギー敗戦」と社説で報じた。

 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議論に代表されるように、近年のエネルギー政策は温暖化政策に隷属されていた。化石燃料は座礁資産になるとして新規の上流投資が進まなかった。資源価格が高騰し、世界は手頃な価格で安定供給されるエネルギーの重要性を思い知った。

 化石燃料が高騰したなら再エネを活用すべきという主張が出る。だが、今後は鉱物資源の主要産出国の中国に依存することになる。脱炭素を目指すのは大切だが、「1.5度目標」を絶対視して化石投資を軽視してはいけない。石炭火力も原子力も使えるものは使うべきだ。

(談)


電気新聞2022年3月4日