近年、社会インフラのデジタル化が進む中で、電力業界では「スマート保安」の導入が注目されている。前稿では、AI(人工知能)やIoT・ローカル5Gを活用した社会インフラの革新の可能性、電力システムの特性(24時間連続供給の必要性など)から、技術導入における慎重さが必要であることについて言及した。今回は、こうした課題を解決しスマート保安を実現するための「ネットワークインフラの要件」に焦点を当て、セキュリティー対策やシステム構築の在り方について考察する。

電力システムは、365日24時間の連続稼働が求められる社会インフラであり、保安業務には「確実性」と「即時性」が強く求められる。万が一、システム障害が発生すれば、社会活動や経済活動に即座に影響が及ぶため、導入技術の安全性検証は極めて重要となる。
こうした背景のもと、AIやIoTを活用した「スマート保安」の導入が進んでいる。設備の状態をリアルタイムで監視し、異常の兆候を早期に検知することで、突発的な故障を未然に防ぎ、予防保守によるコスト削減が可能となる。特に、AIによる高度なデータ分析は、設備の劣化傾向や故障予兆の検出精度を高め、保安業務の質的向上に寄与する。
◇遠隔地も通信安定
通信インフラの整備もスマート保安の実現に不可欠である。
従来の光ファイバーやWi―Fiに加え、近年ではローカル5Gの活用が注目されている。ローカル5Gは、事業者が自営で構築可能な高速・低遅延・高信頼の通信ネットワークであり、電力設備の密集地域や遠隔地における安定した通信環境の確保に貢献する。特に、災害時や緊急対応時においても、外部ネットワークに依存せず通信を維持できる点が大きな利点である。
セキュリティー対策においては、暗号化通信や多層防御が重要であり、システムによっては「閉域ネットワーク」が求められる。またローカル5Gが実装するSIM認証は通信キャリアで利用される強固なセキュリティーであり、外部からの脅威を遮断するために有効な手段となる。これにより、データの改ざんやシステム侵入のリスクを大幅に低減できる。
◇技術者の育成急務
制度面でも整備が求められている。電力業界向けのサイバーセキュリティー基準の策定や、専門技術者の育成プログラムの拡充が急務である。
さらに、AIの判断プロセスや運用データの取り扱いに関する法的枠組みの整備も、社会的信頼の獲得に向けて重要な課題となっている。
これらの技術的・制度的な取り組みにより、電力システムは単なる自動化を超え、自律的に安全性を確保できる高度インフラへと進化する可能性を秘めている。デジタル技術を最大限に活用し、セキュリティーと信頼性の両立を図ることで、電力システムは持続可能な社会の基盤として、より大きな役割を果たしていくことが期待される。
電気新聞2025年8月4日





