第68回「電気のある生活」写真賞 入賞作品が決定
第68回「電気のある生活」写真賞(富士フイルムイメージングシステムズ後援、全日本写真材料商組合連合会協賛)の入賞作品が決定しました。
「ダムトンネル現場見学」五十嵐 俊紀(秋田県)
全国743人から寄せられた2,093点の中から、最優秀賞には五十嵐俊紀氏(秋田県・80歳)の「ダムトンネル現場見学」が選ばれました。また特選には、設楽怜司氏(埼玉県・34歳)の「五輪オリンピック号」が、準特選には太田洋之氏(東京都・75歳)の「大都会」と、河野潔氏(埼玉県・62歳)の「電球交換」が、それぞれ選ばれました。このほか入選20点・奨励賞20点が選ばれ、各賞には電気新聞賞と富士フイルム賞がそれぞれ贈られます。
応募者を年代別に見ると70歳代が35.8%と最多。次いで60歳代が20.6%と、退職後の趣味に写真を楽しんでいる世代が全体の半数以上を占めました。男女比は男性83%、女性17%でした。
選考は2022年1月18日に行われ、木村惠一(日本写真家協会名誉会員)、榎並悦子(写真家)、早田敦(電気事業連合会専務理事)の3氏が審査を行いました。
私の写真歴は約55年になります。このコンテストは昭和30年に始まって第68回と続いて本当に驚いています。これまで数度応募しましたが、せいぜい入選止まりでした。1月18日に主催者から電話があり、応募した作品「ダムトンネル現場見学」が最優秀賞に入賞したとのこと。一瞬「やった!」と思いながら本当に夢のような気持ちでした。ありがとうございます。
今の社会、電気はあらゆる所で日常的に安心して使われています。しかし突然災害などで電気がとまったら想像もつかない事態が発生し、その復旧の見通しが長くなったら私たちの生活をおびやかし、命の危険にも迫られるでしょう。今、代替エネルギーとして太陽光発電や、風力、水力、地熱発電などが国際的に研究されています。秋田県内では、日本海沿岸に大規模な風力発電、奥羽山脈の麓に「成瀬ダム」、鳥海山の麓に「鳥海ダム」が令和10年頃の完成をめどに急ピッチで建設されています。
このたび入賞した作品は、「鳥海ダムトンネル」で撮ったものです。
最後になりますが、主催者をはじめとする皆さまのさらなる発展と、コンテストの継続を楽しみに期待しています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出の機会に制限があった前回と比べ、応募者が増えたのは喜ばしい。特にイベントやお祭りに関連する作品が少しずつ増えている。また、コロナ禍での〝ファミリー〟にフォーカスした作品には良いものが多かった。一方、ITなど電気の先端性を感じさせる新しい視点で撮影した作品が乏しかったのは少し残念だ。
最優秀賞の「ダムトンネル現場見学」は、リアリティーがあり、技術的にも大変優れている。ダムの工事現場は一般の人はなかなか見ることができないが、スケールの大きさや、水と電気の供給に役立つ施設であることが伝わってくる1枚だ。
特選の「五輪オリンピック号」は、五輪カラーに彩られた5両の列車が橋梁を渡る瞬間をとらえた。河畔の岩場に腰掛けた家族がスマホで車両を撮る後ろ姿を写す発想も良いアイデアだ。
準特選「電球交換」は、一時代前の家庭の様子を彷彿させる光景。里帰りした息子が写したこの1枚は、蛍光灯を交換している父親の足を母親が支えている瞬間をとらえている。普通なら被写体になりそうもない一幕だが、今の時代感覚をあらわす良い視点の作品だ。
同じく準特選「大都会」は良いアングルを探したと思う。マンションがカラフルであること、近代的な都市の姿をあらためて教えてくれる1枚。シャープであり、「電球交換」とは対照的な「電気のある暮らし」を写している。
電気というとまずは「あかり」が頭に浮かぶ。しかし、科学や医療など最先端の技術分野のように、「あかりのない電気」という視点もある。そうした面から表現するような作品にも今後は期待したい。
今回は、7歳の子どもからの応募があった。賞の歴史の中で最年少の応募だろう。父親の手をアップで写した作品だ。応募者の年齢層に幅が広がっていることは、写真の世界の大きな変化とも関係しているのではないだろうか。変化とは、デジタルカメラをわざわざ持っていかなくても、手軽に撮影できる環境になっていることだ。そうした変化を踏まえ、チャンスに出会えたら、その発見を逃さないでほしい。新しい発見を切り取る習慣を付けると、写真の世界はさらに面白くなる。
コロナ禍を象徴するような作品が目立った前回と異なり、〝ウィズ・コロナ〟を感じさせるような作品が多かった。また、五輪・パラリンピックにちなんだ作品を見ると、写真が持つ記録性の良さを反映している。
トンネルには暗いイメージがあるが、「ダムトンネル現場見学」は一般の人も安心して見学できる現場の様子を切り取っている。このことは、あかりのありがたさを伝えてもいる。
「五輪オリンピック号」は、もし撮影者が鉄道ファンならこうはならないと思う。引いたアングルから、人々が華やいでいる様子も伝わる。「電球交換」は誰が見ても心温まる1枚。「大都会」のような写真は横のアングルを選びがちだが、スカイツリーを意識して縦の構図にしたのが良い。意識しなければ撮れない瞬間がある。時代を意識し、撮影に臨んでほしいと思う。
カーボンニュートラルの機運が高まる中で、環境との調和が表現されているような写真に期待し、審査に臨んだ。その点で、多目的ダムの現場を写した「ダムトンネル現場見学」は、一般の人々の興味深さが伝わる作品。風力や太陽光など再エネ設備のメンテナンス作業を写した作品も今回の応募作には多かった。
東京五輪・パラリンピックも今回のトピックスだったが、意外に少なかった。その中で「五輪オリンピック号」は、間接的に五輪を感じさせる良い1枚。「電球交換」は妻が夫の足を支えている様子のほほえましさと同時に、老老介護の時代を映し出しているとも感じた。
「大都会」については、まさしく東京ならではの光景。スカイツリーを中心に、左右がシンメトリーになっている構図が良い。
電気の使い方、使う分野の広がりが見て取れる写真をこの先も期待したい。
各地での入賞作品の展示会を予定しております。詳細が決まりしだい、このページでお知らせします。