希少性の高い国産ライチのスマート栽培技術の社会実装を進め、ライチ栽培が魅力あるアグリ事業へと発展するためには、安定生産とともに競争力強化に役立つ高付加価値化が必要である。私たちは国産ライチの高付加価値化を図るために、ブランディング、機能性表示食品の届け出、試験販売での市場評価に取り組んでいる。同時に、地域の活性化を目指した農業ビジネスへの異業種参入を図る企業を支援する栽培コンサル事業を並行して行い、技術の社会実装を前進させている。


 農産物を高付加価値化することは、収益向上や需要創出、消費拡大に加え、雇用創出や地域活性化の効果が期待できる。実際、全国各地で、特産農産物を対象にブランディング、加工品開発、機能性研究、6次産業化などが盛んに行われている。また、無農薬・減農薬栽培、有機栽培、スマート栽培などの栽培方法による差別化も、価格競争から脱却するための高付加価値化には有望である。そこで、国産ライチの高付加価値化を目指し、ブランディング研究と機能性研究に取り組んだ。

 スマート栽培技術による国産ライチのブランディングを図るため、香川大学創造工学部と共同研究を行い、ライチのスマート栽培技術を「美の紅果(びのこうか)」の名称でブランド化した。亜熱帯果樹のライチに適した環境制御と栽培施設を実現し、「3つの美」を備えた高品質なライチの栽培を可能とした点を特徴とするスマート栽培技術をブランド化。つまり「3つの美」は、美味しさと美容、美しい環境に由来している。

 ◇GABAが豊富に

 2015年に開始された機能性表示食品制度は、農林水産物など生鮮食品にも健康の維持、増進に役立つことが期待できる機能性を表示できる制度。事業者の責任で、科学的根拠に基づいた機能性を商品パッケージに表示できる。最近は農産物に関する届け出も増えている。

 私たちは、国産ライチの付加価値化にもこの制度が有望と考え、農研機構が公開している農産物の研究レビューを元に、GABA(γ―アミノ酪酸)の成分に着目、ライチをGABA分析した。分析の結果、スマート栽培技術「美の紅果」で栽培した生ライチの果肉には、GABAが100グラム当たり100ミリグラム程度と、豊富に含まれることが明らかになった。分析結果を元にGABAによる「肌の弾力の維持」「一時的な精神的ストレスや疲労感の緩和」「高めの血圧の低下」という3つの機能性について、全国初となる生鮮フルーツのライチで機能性表示食品の届け出をした。

 当社で栽培されたライチの果実は、一般顧客への認知度向上と体験機会創出のため、21年度から毎年四国を中心に試験販売している。24年6月の機能性表示届け出の完了を受け、ブランドロゴと併せた機能性表示のラベルをデザイン。「美の紅果」で栽培された国産ライチ果実のパッケージに貼り付け、JR高松駅に隣接する商業施設・高松オルネで試験販売し、高値での販売実績と高い評価を得た。

 ◇バイオガス利用も

 当社は、国産ライチ栽培ノウハウと優良品種株を活用した栽培コンサル事業を22年にスタートし、技術の社会実装を進めている。香川県内で産業廃棄物処理事業を行う富士クリーンから栽培コンサルを受託。現地で24年に完成した100平方メートルの試験温室で、栽培試験を行っている。ここでは、ライチ栽培施設の環境制御に必要なエネルギーを、産業廃棄物を原料としたメタン発酵で得られたバイオガス(再生可能エネルギー)で賄うカーボンフリーライチ栽培の可能性について検証中だ。

 今後は、全国を対象にライチ栽培コンサルを展開し、栽培面積の拡大や産地創出を目指す。

 また、農業におけるカーボンニュートラルの実現に貢献するため、再エネを利用できる施設栽培システムの開発を目指している。そこでは、太陽光発電を利用した新しい農業電化技術を研究中で、将来はライチ栽培との組み合わせも見据えている。これからも、希少価値の高い国産ライチ栽培技術が次世代の農業ビジネスへと発展し、日本農業の活性化に役立つことを願っている。

電気新聞2026年5月11日