基調講演「電気保安のスマート化に向けた取り組み」

2017/08/30

伊万里氏20170801122732-D5P_2731

◇規制合理化、変化に対応

 経済産業省 産業保安グループ電力安全課課長補佐
 伊万里 全生氏

 電気保安のスマート化についてはこの2年ほど取り組みを進めてきた。背景として電力システム改革が進む中で、技術革新・ビジネススピードの加速、新規事業者の参入拡大、外生的・構造的課題の顕在化といった環境変化や課題に直面していることがある。

 そこで大きく分けて3つの検討を進めている。一つがめりはりのある規制で、民間に任せる箇所と国が対応すべき箇所を整理し、設備状況に応じた規制へと見直す。次に事業者の保安力向上。IoTやビッグデータ、AIなどの技術が活用されるよう、規制側からもアプローチしていく。最後に技術支援機関(TSO)を中心に継続的にPDCAを回す体制を整備する。

 これまでの措置では、基本的に事故が増加傾向にあった太陽光、風力発電設備は規制を強化し、事故が低水準で推移する大型火力は合理化した。制度改正は大半が2016年度までに終了し、今後は着実に運用しながら必要に応じて修正するフェーズになる。

 事業者の保安力向上に向けては、火力の安全管理検査制度を4月から見直した。溶接安全管理審査を廃止し、適切な保守管理を行う場合には検査周期を6年に延ばせる。IoTによる常時監視など新技術を導入する契機になればと思う。

 めりはりある規制では4月から定検を義務付けた風力について、法定の審査を登録審査機関が行う制度を導入している。こちらもインセンティブを設け、受審周期を6年に延ばすことが可能。太陽光は技術基準の整備を検討しているほか、事前確認、事故報告を強化。再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)と連携した対応も行う。インセンティブは今後の検討課題だ。

 さらなるスマート化に向けては、20年度をめどに取り組みを進めたい。技術基準の性能規定化に向けた委託調査や新技術の実証を進めている。15年度の調査では電気保安のプロセスに応じた技術を類型化し、16~17年度に検証を行っている。有益な技術はマニュアルに落とし込むなどし、普及を図りたい。

 技術基準の性能規定化が進む中、民間規格を活用する仕組みは十分機能していない。さらに検討し、制度見直しなどを進めていきたい。中長期的には、TSOである製品評価技術基盤機構(NITE)を活用し、政策課題の変化に対応してPDCAサイクルを回す体制を整えていく。

<<「スマート化進む電気保安 その最新動向」トップ
講演「技術革新が導く電力業界の変革と新たなビジネスモデル」>>