◆電気設備の保安・保守に新たな動き◆


 産業保安の高度化に向けた取り組みが進んでいる。変電業界でも、高経年化を踏まえた設備更新が増加しそうだ。国内で稼働中の変圧器約1万6千台のうち40%以上が、設置から30年以上が経過した高経年器であり、モニタリングやメンテナンスの需要が高まっている。変圧器が故障し、深刻な被害を引き起こさないため、診断技術の高度化などが求められている。

 

◆産業保安高度化/経産省が検討に着手、規制体系の見直しも

 電力システム改革の進展や再生可能エネルギーの導入拡大など、電気事業を巡る環境は大きく変化している。こうした状況下で、保安の確保は最も重要なテーマとなり、事業実施の前提になる。

 このうち、自主保安の高度化では、IoT(モノのインターネット)やビッグデータなどの最新技術を取り入れてレベルの高い保安を実施している事業者に対し、法定検査の周期を延伸するといったインセンティブ適用の検討が進んでいる。

 電気保安に関しては、技術革新やビジネススピードの加速、新規事業者の参入拡大、構造的課題の顕在化などに対応するため、スマート化を進める。スマート化のテーマは「メリハリのある規制」と「事業者の保安力の向上」だ。

 メリハリのある規制では、民間に委ねる部分と国が対応を強化すべき部分の両面から、各設備の状況に応じた体系への見直しを進めている。事業者の保安力向上では、インセンティブを付与することで事業者の工夫を促進するとともに、IoTやビッグデータ、人工知能(AI)の導入を促す。また、保安規制行政として技術的専門性を強化するため、技術支援機関を整備する。

 電気保安を巡る環境変化として、再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、電気設備の保守管理経験の乏しい事業者が増加している点が挙げられる。さらに、自然災害の激甚化やサイバー攻撃など新たな外生的脅威に直面し、中長期的に電気保安の人材確保が難しくなるといった課題もある。

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