トリチウムの基本Q&A

2011年に事故を起こした福島第一原子力発電所では、事故で溶け固まった核燃料(燃料デブリ)に水をかけて冷やし続ける必要があります。冷やした後の水※1※2には様々な放射性物質が含まれています。大部分の放射性物質は多核種除去設備(ALPS)で取り除いていますが、トリチウムは取り除くことができないため、ALPSで処理した後の水などをタンクにためてきました。しかし、燃料デブリの取り出しなどの困難な廃炉作業を安全かつ着実に進めていくために福島第一原子力発電所の敷地を最大限有効活用する必要があることから、政府はタンクにためたALPS処理水の処分方法について、関係者の皆さまにも意見を聴きながら、専門家などとの議論を重ねてきました。その結果、2021年4月、処理水を海水で十分にうすめ、福島第一原子力発電所から海洋放出するという処分方法を決定しました。
東京電力はこの決定に基づき、2023年6月末に放出設備を完成させ、原子力規制委員会も検査合格を示す「使用前検査終了証」を交付しました。同年7月には、国際原子力機関(IAEA)が、この放出計画について「安全基準に整合的」と評価した包括報告書を公表しました。東京電力は、海洋放出に対する政府の決定に従い8月24日、処理水の放出を開始しました。
海域の状況を客観的、包括的に把握するため、東京電力の他、関係省庁や自治体などでモニタリングが行われています。本パンフレットでは、トリチウムがそもそも何なのか、何が問題になっているのかを分かりやすく説明します。

写真 福島第一原子力発電所の敷地内に建ち並ぶタンク群
図1 汚染水は放射性物質(トリチウムを除く)を除去し、海水で十分にうすめて計画的に放出します
※1
「 汚染水」と呼ばれます。トリチウムのほか、セシウム、ストロンチウムなどの放射性物質が含まれています。原子炉の建物から外に流出しないように管理していますが、地下水や雨水が入り込むのをふせぎきれず、汚染水の量が増す原因となっています。東京電力では、地下水をくみ上げるサブドレン(井戸)や、陸側遮水壁(地中の氷の壁)などをつかって地下水の入り込む量を減らす取り組みを行っています。
※2
汚染水は、まずセシウムとストロンチウムを除去します。これを「①ストロンチウム処理水」と呼びます。次にALPSで安全に関する規制基準値を下回るまで浄化され「②ALPS処理水」となります。なお、初期にALPSで処理された水の一部には規制基準値を満たしていないものがあり、「③処理途上水」と呼ばれています。③は、規制基準値を十分に下回るまで再浄化します。

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