エネ教育賞入賞校決まる 震災の経験を授業に反映

20121030

第7回エネ教育賞の最終選考

日本電気協会(電気新聞)はこのほど、都内で「第7回エネルギー教育賞」選考委員会(委員長=有馬朗人・元文部相)を開き、小学校の部11校、中学校の部5校、高校・高専の部8校、合わせて24校の入賞を決定した。このうち福島県いわき市立小名浜第一小学校、札幌市立宮の森中学校、山形県立東根工業高校の3校を最優秀賞に選んだ。3校いずれも東日本大震災の経験などを反映しながら、エネルギーに向かい合う熱意が感じられる学習内容だった。

小学校の部で最優秀賞に選ばれた小名浜第一小は、学校全体で系統立った学習プログラムを展開。外部連携による体験学習にも意欲的に取り組んでおり「震災で傷んだ地域で、ここまでよくやっている」(木村委員)など、全会一致だった。「防災エネルギー教育」への取り組み、課外の放射線学習なども評価された。このほか、前回最優秀校の札幌市立百合が原小も「(小名浜第一小と)甲乙つけがたい」(東嶋委員)など高評価だった。

中学校の部、宮の森中は「自然との共生」を掲げ、理科教育を軸に学習している。震災のため岩手県への修学旅行が変更を余儀なくされ、代替地に津波被災から復興した奥尻島を選び、北海道電力の泊原子力発電所も訪ねた。全校・全教科への広がりには課題を残すものの、今後の発展性への期待も込めて、最優秀賞に選んだ。

高校の部は、東根工高と岩手県立黒沢尻工高を推す意見が分かれ、前者に最優秀賞、後者には選考委員特別賞を贈ることで決着した。東根工高は学科の枠を超え、全校生徒で手作り太陽電池パネルを製作。これを使った公開講座、出前授業などで、エネルギーへの理解を深めている。被災地の宮城県東松島市での出前授業や、モンゴル、バングラデシュにも出向くなど、国内外での交流にも取り組んだ。

黒沢尻工高も出前授業を通じてエネルギー教育に取り組んでおり「自分たちで工夫し、考え出したものは、心に残る」(三田委員)と活動内容の評価が高く、継続性も評価された。ただ、全校挙げての活動ながら、エネルギーを扱うのが電気科のみであったため、一歩譲った。このほか青森県立三本木農高の、鶏舎の照明に3色LED(発光ダイオード)電球を使う研究が「(表彰式の)選評で触れたい」(有馬委員長)と独創的な学習として注目された。

本賞は電気新聞創刊100周年を記念して2006年に創設。エネルギー教育に積極的に取り組む学校を顕彰し、次世代層のエネルギー問題への理解促進に資することを目指している。今回は応募総数46件。内訳は小学校22校、中学校8校、高校・高専15校、その他(大学)1件だった。

選考委員は以下の通り。(五十音順)

▽有馬朗人氏(選考委員長、元文部相)▽小田公彦氏(山形大学教授)▽木村孟氏(東京都教育委員長)▽澁澤文隆氏(帝京大学教授)▽東嶋和子氏(ジャーナリスト)▽三田敏雄氏(中部電力会長)▽峰岸誠氏(玉川大学教授)

(本紙2面より)