[エネ教育はいま]初年度エネルギー教育モデル校が総仕上げ

                                   
 初年度となる2014年度に選定された「エネルギー教育モデル校」が今月末、3年間の活動に区切りをつける。総仕上げとなった報告会では、地域性に富む様々な工夫が盛り込まれた授業実践が紹介され、教育関係者の注目を集めた。3年間にわたり段階的に取り組みを進め、年間カリキュラムにエネルギー教育を組み込むことで継続して活動できる仕組みを整えた学校も少なくない。これまでの成果を踏まえて定着と深化を図り、外部への情報発信などを通じた地域でのネットワークづくりにも期待がかかる。(境 茂)

◆初年度モデル校が報告会で3年間の成果発表

明治小学校発表
明治小学校の発表には授業を受けた6年生2人も登壇した
 エネルギー教育モデル校事業は経済産業省・資源エネルギー庁が14年度に始めた。毎年、小中高合わせて30校程度を選定し、3年間にわたって教育活動費の支給、教材や資料の提供、外部講師などの派遣といった支援を行う。現在全国で90校あるモデル校には(1)エネルギー安定供給の確保(2)地球温暖化とエネルギー問題(3)多様なエネルギー源とその特徴(4)省エネルギーに向けた取り組み――という4つの課題が与えられ、これに対応した教育実践を展開している。

 14年度には小学校16校、中学校15校が選定されており、今年度末に初めて3年間の認定期間を全うする学校がでることになる。今月4、5日、都内で開かれた「実践報告会」では、そうした各校の取り組みが総仕上げとして紹介された。

 このうち大分県の佐伯市立明治小学校は農業、水産業、林業など地域の5つの産業でエネルギー利用について調査・見学を行い、総合的に問題を捉える姿勢を養う取り組みが注目を集めた。エネ庁主催の「かべ新聞コンテスト」で科学技術館奨励賞を受賞した6年生女子2人も発表に加わり、考察内容のプレゼンテーションや学習結果をニュース風にまとめた動画などを紹介した。指導にあたった古澤拓也教諭は「自らの考えを正確な情報をもとに発信していく活動を行った」と狙いを強調していた。

 山口県の下関市立向井小学校では関門海峡を通る船舶の種類を調べ、エネルギー資源のほとんどが輸入されている現実を実感させる学習を展開した。柳井市にある中国電力柳井発電所を夏休みに親子で見学するなど、外部との連携にも積極的に取り組んだ。地域の特徴的な素材をうまく学習に取り入れる姿勢に教育関係者の共感が広がった。

 テクノロジーから考えるエネルギー教育を実践したのは、滋賀県の大津市立志賀中学校だ。未来を担う中学生に必要な資質として科学的に正しい認識を持つこと、自分の考えを導き出す能力を挙げ、理科、技術・家庭、社会といった教科を有機的に組み合わせたカリキュラムを構築した。1年生の学習開始時と3年生の終了時で生徒の意識変化を探るアンケートも行っており、その手法に注目が集まった。

◆継続活動への基盤構築を/地域との連携手法など模索

教員見学会
モデル校の教員によるエネルギー関連施設の見学会も行われている(写真は北海道での野菜生産工場の見学会)
 報告会では、3年間の活動を通じて教材や図書の充実、電力会社など外部組織との連携、エネルギー教育の年間カリキュラムへの組み込みといった面で成果を指摘する学校が目立った。一方で、取り組みを続けていくためには学校全体で支える体制が必要との声が多く聞かれた。

 エネ庁調査広報室の柴山豊樹室長は「学校でエネルギー教育がしっかり根付いていっていることに手応えを感じている。今後は続けること、広げることが大切だと考えており、今年度、全国9カ所に設けた地域会議(地域エネルギー教育実践活動推進会議)などを活用しながら、孤軍奮闘になりがちな先生方を支えていきたい」と話す。

 実際のところ、熱心に取り組んでいた教員が転勤してしまうと、その学校の活動が下火になってしまうケースはよく耳にする。これを避けるためには、エネルギー教育を組み入れた年間カリキュラムを作成したり、複数の教員が参加する推進チームをつくり上げたりすることで、組織的に活動できる基盤を構築する必要があるだろう。報告会でもそうした指摘が多く聞かれた。

 初年度選定された31校はモデル校としての活動には一区切りつけるものの、外部との連携や培ったノウハウを地域に発信していく役割が期待される。地域を巻き込みながら活動を「点」から「線」「面」へと広げる仕事はこれからだ。

 ※2017年3月21日付電気新聞12面掲載記事を再掲(記事PDFはこちら