オープン化が扉開く/業界の垣根を越えて
インテル常務執行役員・インダストリー事業本部長 張磊氏に聞く
――企業向けに新製品を紹介する「データセントリック・イノベーション・デイ」を開催した狙いは。
「今回初めて企業の皆さまに新製品を紹介したのは、『データセントリックな社会』を見据えて膨大なデータをいかに有効利用するかが課題となる中で、企業の事業部門でも最新技術への関心が高まっていると感じているからだ」
「インテルは約3年前から、データセントリックな社会が来ると言い続けてきた。もともとデータは存在していたが、大量のデータを扱う技術がなかった。あったとしてもコストが高く、利用できる企業はほんの一握りだった。誰でも手軽に使える技術が目の前にあることを、皆さまと共有したかった」
◇電力とIT融合
――デジタル・トランスフォーメーションに向けた電力業界の取り組みをどう思っているか。
「すごい勢いで変革が進んでいることを、肌で感じる。現状を変えなければいけないという危機感は強く、効率化を目的とするデータの活用が急速に進んだ。一方では、データを生かした新サービスも出てきたが、決定打といえるサービスがなかなか生まれてきていないと聞いている」
「我々は4~5年前から電力会社に対し、様々なサービスを提供できるオープンなプラットフォームづくりを提案してきた。それが次に進むべきステップではないだろうか。電力会社が新サービスを消費者に直接提供するのは、専門人材の確保などの点でハードルが高いと思う。社会インフラの一翼を担う電力業界としてどのようなプラットフォームをつくるべきか、複数の電力会社が一緒になって考えていく必要があるというのが、私個人の見解だ」
――電力データからどのような価値を引き出せると思うか。
「電力データを使って何ができるのかを考えるよりも、社会にとって何が必要かを考えることが先決だ。そのためには、(電力業界という)閉じた世界の中だけで悩まず、外の世界に向かってドアを開かなければならない。電力業界が抱える最大の課題は、(他の業界と同様に)いかに業界の垣根を越えられるかという点にあると思う」
「例えば、電力のライフサイクルは発電、送配電、小売りだけではない。発電の先には燃料の生産や輸送がある。小売りの先にはサービスもある。これらも一つのエコシステム(ビジネス協調関係)と捉えてデータを融合すれば、より大きな経済効果を生み出せる。実際に、そのような大きな成果を生み出している他業界もある」
「もちろん、業界間でデータを共有するのは簡単ではないが、信頼できる相手とだけ、安全にデータを交換できるロジック(仕組み)を組むことができれば、あらゆる業界とつながる。これはIT業界にとってのチャレンジでもある。我々が電力業界とディスカッションしたり、『エネルギーフォーラム』を開いたりする目的の一つは、電力とITの融合だ。ビジネスの課題を解決できなければ、ITシステムの存在意義がない」
◇社会貢献を発信
――7月に開催するエネルギーフォーラムのテーマは。
「今回はデータ活用に焦点を当てる。今、世界中にあるデータの90%以上は過去2年間で生み出され、活用されているのはわずか2%にすぎないといわれている。様々な業界のデータを融合して有効活用すれば、より社会に貢献できるというメッセージを発信したい。また、これまでと同様に他業界や海外企業を招き、日本の電力業界との交流の場を提供する予定だ」