7原子力利用に関する基本的考え方と原子力白書
「原子力利用に関する基本的考え方」と原子力白書

○「原子力利用に関する基本的考え方」

 
 原子力委員会は2017年7月20日、原子力利用の長期的な方向性を示す「原子力利用に関する基本的考え方」を決定した。基本目標として「責任ある体制のもと、徹底したリスク管理を行った上での適切な原子力利用は必要」と明記。安全性の確保を大前提とした上で「国民からの信頼を得ながら原子力技術が環境、国民生活、経済にもたらす便益とコストを十分意識し進めることが重要」とした。翌21日の政府の閣議決定を受け、今後、政府の原子力政策に反映されることになった。
 安全文化確立に向けた記述に関しては「ゼロリスクはない」と認識し、不断の安全性向上に取り組む姿勢をより踏み込んだ。原子力を取り巻く環境が大きく変化しており、今後5年をめどに基本的考え方を見直し、改定する。
 この他、福島事故の影響について、国民の原子力への不信・不安に真摯(しんし)に向き合い、社会的信頼を回復していくことが必須と指摘した。
 4月の原案では福島事故後、「国民全体がステークホルダーとして再認識された」していた部分を、「国民全体の問題として捉えるようになった」に変更した。

 

○7年ぶりの原子力白書

 
 2017年9月、原子力委員会は7年ぶりとなる原子力白書を取りまとめ公表した。原子力白書は原子力委員会が発足した1956年から2010年まで継続的に発行していた。その後、福島第一原子力発電所事故や原子力委員会の見直しなどで休刊していたが、原子力利用の現状や取り組みの全体像を説明する責任があるとし、再開することになった。今後は毎年発行する見通し。
 白書では、原子力利用に関する基本的考え方や福島事故を踏まえて実施した安全規制の強化、原子力の研究開発動向などを解説している。原子力安全に向けた取り組みでは、新たに発足した原子力規制委員会について、「世界で最も厳しい水準の新規性基準を制定し適合性の審査を実施している」と紹介。福島第一の廃炉に関しては、国内外の幅広い分野の英知を結集し、研究開発を進めることが必要と指摘した。
 原子力人材の育成・確保の必要性も示した。関連学科を志望する学生は94年度をピークに減少。近年は年間750人程度で推移している。原子力関連企業の合同説明会では、工学系人材の参加減が著しい。
 電力事業者への採用も福島事故後に減少したまま。中長期にわたる取り組みを進めるため、様々な技術開発を担う人材育成・確保を重要な課題に掲げる。
 原子力のエネルギー利用に関しては、可能な限り低減させる国の基本方針を掲載した。ただ、日本のエネルギー資源の輸入依存度が先進国で極めて高いことや、火力発電のたき増しによって化石燃料輸入が増えている実態にも触れている。
 原子力の平和利用については、国際原子力機関(IAEA)保障措置の厳格な適用や、プルトニウム利用の透明性向上などで担保していると記載。着実なプルトニウム利用には「プルサーマルが現在では唯一の現実的な手段」との見解を示している。

 
(2017年10月26日付電気新聞記事を再構成)

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