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福島第一デブリ取り出しへ、超音波で水中可視化/日立と日立GE

2017/09/08  1面 

開発した超音波画像化装置のセンサー部分。広域監視を可能にするためセンサー前面に拡散レンズを取り付けた

開発した超音波画像化装置のセンサー部分。広域監視を可能にするためセンサー前面に拡散レンズを取り付けた

◆濁水でも撮影可能/廃炉ロボの「目」に

 日立製作所と日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市、久米正社長)は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、格納容器内部にたまった水中の状況を可視化できる超音波画像化装置を開発した。水が濁ってカメラの映像撮影が難しい場合でも、安定した画像化が可能。超音波を発信するセンサーから電子回路を分離させたことにより、耐放射線性も高めた。溶融燃料(燃料デブリ)取り出し時に水中で活用するロボットの「目」として用いることで、廃炉作業の効率化に貢献することなどが期待される。(工藤 勇祐)

 開発を行っている日立市の日立研究所。装置のセンサーを水槽に沈めたのとほぼ同時に、水槽の底部に置かれた格子状の鋼材がモニターに映し出された。映像はモノクロで、カメラで撮影した映像と比較すると視認性は落ちるものの、24ミリメートルの格子の隙間も問題なく確認できた。海底の状況を調べたりするのに使うソナーと似たような技術だという。

 このとき水槽の中には水道水が入っていたが、福島第一の格納容器内部は水が濁り、堆積物の舞い上がりも懸念される。このような水でも画像化は可能なのか。

 日立の小林亮介・研究開発グループ研究員は「超音波は濁った水も通る。仮に、この水槽の水に鉄錆を混ぜて、中が全く見えなくなってしまっても、同じような映像が撮影できる」と胸を張る。

 ◇耐放射線性高め

 装置はセンサー、信号の送受信機、操作装置とこれらをつなぐケーブルで構成される。超音波を発信し、反射波を受信するセンサーには、超音波を拡散するレンズを取り付けることで広域監視を可能にした。

 開発のポイントは、放射線の影響を受けやすい回路基板をセンサーから分離し、送受信機側に載せたことだ。これにより、水中に入れるセンサーの耐放射線性は100万グレイを実現した。

 福島第一の格納容器内にたまった水の中では、放射線量が高いところでも毎時10グレイ程度で、10万時間は稼働できる計算だ。廃炉作業で使う場合、装置の交換回数を最小限に抑えることができるため、作業の円滑化も期待できる。

 単体での使用は想定しておらず、燃料デブリの取り出し作業を行うロボットの「目」として使ったり、ロボットの作業を支援する「鳥の目」として使うことなどが考えられる。

 日立GEは国際廃炉研究開発機構(IRID)と、燃料デブリ取り出し作業を想定した「筋肉ロボット」なども開発している。水圧とバネで動く単純な構造として耐放射線性を高めたが、放射線に弱いカメラをどうするかが今後の課題となっている。超音波画像化装置は、こうした課題を解決できる可能性を持つ。

 ◇メリット生かす

 政府が今月公表した廃炉工程表「中長期ロードマップ」の改訂案では、燃料デブリの取り出し作業について、まずは格納容器底部の燃料デブリを横から取り出す工法を軸に検討する方針が示された。当面は、格納容器の大部分を水で満たす「冠水工法」は採用しない方向だが、格納容器の底にはある程度の水位を張って作業を行う見通しで、超音波画像化装置のメリットが生きる場面もありそうだ。

 日立GEの平野克彦主任技師は「カメラが使えるならばカメラを使えばいい。ただ、いろんな準備をして、一番良いものを使えるようにしたい」と話す。現行のロードマップで2021年内としている初号機の燃料デブリ取り出し開始に向け、万全の準備を整えたい考えだ。



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