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エナリス、ブロックチェーン技術の実証開始/新電力の投資抑制へ

2017/07/11  3面 

コンセントに接続した機器の消費電力量を計測、ブロックチェーンで記録するスマートタップ

コンセントに接続した機器の消費電力量を計測、ブロックチェーンで記録するスマートタップ

◆「安価・安全」強みに

 エナリスは新電力向け事業の強化策の一環で、ブロックチェーン技術の実証に乗り出した。ブロックチェーンは分散台帳と呼ばれ、複数台のシステムでデータを管理する。既存技術を使って安価で安全なシステムを構築できるのが特徴で、従来の中央集権型システムに新機能を追加するよりも投資を抑制できると期待される。エナリスは、太陽光発電の普及などにより、需要家間で電力を取引する時代が数年後に訪れると予測。電力会社に比べて資金力に劣る新電力も新たなニーズに対応できるよう、準備を加速する。(匂坂 圭佑)

 福島県の「再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業」に、エナリスの「ブロックチェーンを活用した電力取引」が採択された。エナリスがアグリゲーターとなり、福島県内の一般家庭500~千世帯でデマンドレスポンス(DR)を行う。実証の枠組みに再生可能エネは含まれないが、需要を制御することで出力が不安定な電源の導入拡大につなげるのが目的だ。

 実証では、会津ラボ(福島県会津若松市、久田雅之社長)が開発したコンセント型スマートメーター(次世代電力量計)の「スマートタップ」を使用する。コンセントに接続した空調や電気ポットといった家電の消費電力量を計測し、通信で制御する。ブロックチェーンはスマートタップに組み込まれ、DRの発動に必要なデータの記録や管理を行う。

 ◇持ち寄りで構築

 ブロックチェーンはDRの性能や品質に影響を与えるものではない。エナリスがあえて国内の電力業界で実績の乏しい技術を採用する最大の狙いは、投資抑制にある。

 エナリスの南昇執行役員・経営戦略本部長は、「社会や電気事業のルールが変わって複雑になってくると、従来の中央集権型システムではついていけなくなる」と説明する。

 需要に応じて電気を供給するだけでなく、需要を制御するという新しい取り組みを始めるためには、通信技術を組み合わせたシステムを構築する必要がある。既存システムを改修する選択肢もあるが、ブロックチェーンを使えば「必要なデータを持ち寄るだけで、一から安価なシステムをつくれる」(南執行役員)という。

 安さの秘訣(ひけつ)は、複数人で同じデータを所有・管理する仕組みにある。今回の実証ではエナリスだけでなく、各需要家がデータを保有し、DRを発動した場合はそれぞれの台帳に記録される。

 ある需要家がサイバー攻撃を受けたとしても、他者のデータとつき合わせることで改ざんされたデータをあぶり出せるため、中央集権型システムで一つのデータを守ろうとするよりも投資を抑えられる。

 また、既存システムに手を加える場合、他の機能に影響を及ぼさないよう慎重な開発が求められる。ブロックチェーンを活用したシステムを一から構築する場合に比べて時間がかかり、コストが膨らむ要因となる。

 ◇需要家間に対応

 エナリスは需要家間の電力取引が数年以内に実現すると展望し、その時期に合わせてブロックチェーンの本格導入を目指す。契機となるのは、電力会社による太陽光発電電力の買い取り期限が切れ始める2019年問題。「需要家間の取引や分散型電源の普及によって電気の流れが複雑化し、対応するためのシステム投資がどんどん膨らむ」(同)とみる。

 エナリスは新電力支援事業として、需給管理や料金請求の代行といった基本業務だけでなく、DRやネガワット取引といった新サービスの提供も計画する。時代の変化に対応するために必要なシステム投資だが、資本力の小さい新電力ほど負担は重くのしかかる。エナリスはブロックチェーン技術の確立を通じて投資を抑制し、「電気料金の低減など顧客サービスの向上に(資金を)振り向けてもらいたい」(同)としている。



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