2017年4月30日日曜日
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電力・エネルギー

電力小売り全面自由化1年、ソフトバンクが「再挑戦」

2017/03/27  3面 

◆中部・関西で戦略転換

 2016年4月の電力小売り全面自由化にあわせて家庭市場に参入したソフトバンクが今年2月、中部・関西エリアでの販売の軸足を、東京電力エナジーパートナー(EP)の代理店方式から自社プランに切り替えた。契約数の伸び悩みが最大の要因だが、携帯電話と異なる特徴を備える電気という商材を営業担当のソフトバンクショップが扱いあぐねたことも背景にあったようだ。事業担当役員らに取材し、戦略見直しの背景を探った。(長岡 誠)

◆背景に商材の扱いにくさ

 「(契約数が)期待に届かなかった」

 ソフトバンクの馬場一・執行役員は、関西・中部エリアでの家庭向け電力販売の苦戦を率直に認める。

 同社は16年4月以降、関東、中部、関西で東電EPのプランを代理店として販売してきた。ただ、東電EPによると16年度の低圧向け販売目標20万件(関東以外)に対して、1月末の実績は5万件と振るわない。東電EPの小早川智明社長も「(目標未達は)全面自由化後の最大の反省点だ」と話し、営業のてこ入れに意欲を示す。

 東電EPは、電気を多く使う家庭向けの割安プランなどを両エリアに投入。それなりの勝算を持って挑んだはずだが、十分浸透しなかった。

 なぜ苦戦を強いられたのか――。

 馬場氏が販売店と意見交換を重ねる中で、あらためて気づいたのが電気という商材の扱いにくさだったという。「携帯を売る場合、我々のクルー(販売担当者)は(他のキャリアよりも)『絶対に安くなります』というセールストークで自信を持っておすすめできるプランを持っている。月の使用量が大きく変わる電気は『絶対』といえず、説明が難しかった」(馬場氏)とする。

 そもそもソフトバンクショップに来る顧客の大半は携帯の商談が目的だ。本題の説明だけで少なからず手間と時間がかかる中、高いか安いかの検証が難しい電気の営業を加えるハードルは高かった。

◆「必ず安く」独自展開決断

 この反省を生かし、ソフトバンクは東電EPの代理店をやめ、今年2月から両エリアで規制料金よりも1%割安に設定した自社プラン「おうちでんき」の販売を始めた。「必ず安くなるといえる商品をつくってほしい」という現場の声に応えた。

 準備は周到だった。苦戦のさなかにあった昨年10月、東電EPの代理店として営業を行うかたわら、関西で規制料金より割安な新プランを試行投入し、反応を探った。「お客さまから見て分かりやすく、申し込みが一気に伸びた」(中野明彦・ソフトバンクエナジー事業統括部長)ことから、販売戦略の見直しを決断した。

 関東では引き続き東電EPの代理店として営業するが、中部、関西では複数の発電事業者との卸契約や、市場活用で自ら電気を仕入れる。東電EPから卸供給を受けているかどうかも含め、具体的な調達先は非公表としている。

 自らリスクを取る形で新たな領域に踏み出したソフトバンク。当面の脅威は関西電力の原子力発電所再稼働だ。再稼働後、関電が規制料金を値下げした際に、価格優位性を保てなければ、同エリアで存在感を発揮するのは難しくなる。

 「電力小売り全面自由化を野球の試合に例えると、今はまだ1回の攻防が終わったぐらい。ここから先は、本当に頭を使わないと勝ち残れない」(中野氏)。想定を超えた苦戦を糧に、事業の将来像を描けるか。ソフトバンクにとって、17年度は家庭向け小売り参入の真価が問われる年になる。



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